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明解! 超伝導電磁エンジンU

─新改型の説明─
新改型超伝導電磁エンジンの全体像を分かりやすく説明しました。


☆超伝導電磁エンジンの厳密な理論と詳しい構造について知りたい方は、「運動量秩序の研究」をご覧ください。また、合わせて「補足説明」もご覧ください。
☆「明解! 超伝導電磁エンジン」のより詳しい説明と補足説明、UFOのような飛翔体については、「分かりやすい超伝導電磁エンジン」をご覧ください。
☆超伝導電磁エンジンが社会と宇宙開発に与える影響や新型有人宇宙船、高性能無人探査機、高性能飛行機については、「無反動推進の人類社会への影響」をご覧ください。
☆超伝導電磁エンジンを装備したエアカー、エアバイクについては、「超伝導電磁エンジン小型化レポート」をご覧ください。
☆超伝導電磁エンジンがもたらすフリーエネルギーについては、「フリーエネルギー」をご覧ください。


注意
図はすべて概念図であり、実際のサイズを正確に反映したものではありません。


目次

1.新改型超伝導電磁エンジンの内容

2.特許庁の意見
3.特許庁への反論



1.新改型超伝導電磁エンジンの内容

【発明の概要】
 新改型超伝導電磁エンジンは、磁気シールドで半分程度を覆った「超伝導磁石」に対して固定された位置にあるループに直流電流を流すことにより、そのループに電磁力、即、磁力を発生させる一方、直流磁界が作用して「超伝導磁石」の永久電流に働く電磁力の力積が運動量に変化しない無効となりますので、ループに発生した電磁力、即、磁力を推進力・制動力・浮力として利用する高周波超伝導電磁エンジンを改良した装置です。

 【図1】  【図2】
   

【発明が解決しようとする課題】
 新改型超伝導電磁エンジンの課題は、「高周波超伝導電磁エンジン」を改良することです。
「高周波超伝導電磁エンジン」は、脈流磁界の電磁力が偏って「超伝導磁石」に作用することにより機能しますが、その形式上、常伝導磁石から「超伝導磁石」に働く電磁力の偏りが失われやすいのです。そこで、電磁力の偏りを恒常的に確保したいと考えます。また、高周波の脈流を扱う複雑さを回避したいと考えます。そこで、「高周波超伝導電磁エンジン」と同じ原理を用いながら、形式を変更して超伝導電磁エンジンを改良します。新改型超伝導電磁エンジンは、「高周波超伝導電磁エンジン」を改良した発明ですら、改良点以外は、「高周波超伝導電磁エンジン」に従います。

【課題を解決するための手段】
 課題を解決する手段として、新改型超伝導電磁エンジンでは、超伝導電磁エンジンを構成する「超伝導磁石」の半分程度を磁気シールドで覆う改良を行います。かつ、「超伝導磁石」に対して固定された位置にあるループに直流電流を流す改良を行います。ループは常伝導磁石もしくは超伝導磁石を構成します。すると、そのループに電磁力、即、磁力が発生します。一方、「超伝導磁石」の半分程度のみに直流電流の磁界が作用し、磁気シールドに覆われていない部分を流れる永久電流にだけ電磁力が生じますので、電磁力の偏りが恒常的に生じます。よって、その電磁力の力積が運動量に変化しない無効となり、磁力となりませんので、ループに発生した電磁力、即、磁力を推進力・制動力・浮力として利用する高周波超伝導電磁エンジンを改良した装置。

【技術分野】
 新改型超伝導電磁エンジンの属する技術分野を述べます。新改型超伝導電磁エンジンは超伝導現象を利用して電気エネルギーから変換された直線的運動エネルギーを人間が利用可能にする超伝導電磁エンジン技術に関するものです。

【発明の効果】
 新改型超伝導電磁エンジンは、「高周波超伝導電磁エンジン」と違い、磁気シールドによって「超伝導磁石」に働く電磁力の偏りを生じさせますので、「高周波超伝導電磁エンジン」よりも電磁力の偏りが安定的に生じて効果的に機能します。また、「高周波超伝導電磁エンジン」と違い、直流電流を磁石となるループに流しますので、「高周波超伝導電磁エンジン」よりも製造しやすく、かつ、扱いやすいのです。

【産業上の利用可能性】
 あらゆる乗り物を高性能化できます。物を浮かべて楽に移動できる台が製造できます。極めて巨大な物体をも回転させられます。

【背景技術】
 新改型超伝導電磁エンジンの背景技術を述べます。
 電気エネルギーを運動エネルギーに変換して利用可能にする技術としては各種のモーター(電動機)や、リニアモーターカーの使用するリニアモーターがあります。電気エネルギーを得る技術には各種の発電機があります。これらに加えて、超伝導電磁エンジン技術があります。超伝導電磁エンジンは超伝導磁石と磁石となるループを重ね合わせて固定する構造を持ちます。「高周波超伝導電磁エンジン」(特許文献1及び非特許文献1参照)は、従来の超伝導電磁エンジン技術最新型です。新改型超伝導電磁エンジンは「高周波超伝導電磁エンジン」の改良を目的とします。
 改良の対象となる「高周波超伝導電磁エンジン」について、説明します。
 まず、高周波超伝導電磁エンジンの基本的特徴を説明します。
 高周波超伝導電磁エンジンは、磁石となるループと超伝導磁石を重ね合わせたものです。二つの磁石は離れないように固定します。その二つの磁石の中の一つは、常伝導の磁石です。但し、この常伝導の磁石は一回巻きで芯が無く、高周波数かつ低電圧の脈流を流します。脈流の周波数は、その波長がループの一周の長さと一致する程度の高周波数とします。もう一つの磁石は、超伝導磁石であり、超伝導状態となりますので永久電流が流れます。

 【図3】
 

 磁石と磁石を重ねましたので、磁石と磁石の間には、図3で上下方向の矢印で表した反発力もしくは吸引力(どちらも磁力)が生じます。


 【図4】
 

 しかし、この特殊な構造ゆえに生じる打ち消しの力により、図4のように、超伝導磁石に働く反発力もしくは吸引力は打ち消されます。従って、常伝導磁石に働く反発力もしくは吸引力のみが残り、これを推進力として利用します。この推進力は浮力、制動力、方向転換力などとしても利用可能です。
 「脈流の周波数は、その波長がループの一周の長さと一致する程度の高周波数とする」点が、高周波超伝導電磁エンジンが従来型の超伝導電磁エンジンを改良している点でありまして、この改良により、超伝導電磁エンジンが現実に機能する発明となりました。
 次に、高周波超伝導電磁エンジンの具体的構造について述べます。

 【図5】  【図6】
   

 図5が平面図で、図6が側面図です。これらを見れば分かるように、高周波超伝導電磁エンジンは、磁石となるループ、電源、冷却器、ケーブル、超伝導磁石を構成要素とします。ループと超伝導磁石を重ねるように固定します。超伝導磁石と冷却器がつながっていまして、冷却器により超伝導磁石を冷却します。ループと電源がケーブルでつながっていまして、ループには電源からケーブルを通じて特殊な脈流を流します。
 高周波超伝導電磁エンジンの制御について述べます。
 ループに働く電磁力の強さは脈流の強さを変えることでコントロールできます。また、電磁力の強さは、ループの長さ、超伝導磁石の長さを変えることで、変化させることができます。また、電磁力の強さは、超伝導磁石の磁界の強さを変えることで、変化させることができます。そして、電磁力の方向は、脈流の方向を逆転させることで、逆転できます。
 高周波超伝導電磁エンジンの利用法について述べます。
 ループに発生した電磁力、即、磁力を推進力・制動力・浮力として利用します。すなわち、電磁力、即、磁力として得られた直線的運動エネルギーを利用します。
 その直線的運動エネルギーの利用法ですが、高周波超伝導電磁エンジンを乗り物の骨格に固定して力を伝えます。骨格に固定されて力を与えますのは常伝導体です。脈流の強さを変化させますことで、推進力の強さを変化させられます。脈流の流れる方向を逆転させますことで、伝える力の方向を逆転させることもできます。
 乗り物の骨組みに固定して高周波超伝導電磁エンジンの推進力を乗り物に伝えて動かします。例として、高周波超伝導電磁エンジンで物体を打ち上げる図7を示しました。

 【図7】
 

 高周波超伝導電磁エンジンを物体の下に接触させて固定します。高周波超伝導電磁エンジンの上向きの力をF、超伝導電磁エンジンが物体に与える力をfとします。高周波超伝導電磁エンジンは物体に力を伝えた反作用として抗力Tを受けます。
 高周波超伝導電磁エンジンにより、この装置全体に働く力をPとします。
P=F+f-T
そして作用・反作用の法則により
f=T
ですから
f-T=0
これをPに代入しますと
P=F+f-T=F+0=F
結局、装置全体に働く力PはFとなります。このFが装置全体の質量に働く重力よりも大きいときに、この装置を上方に打ち上げることができます。
 高周波超伝導電磁エンジンの利用する物理法則について述べます。
 高周波電磁エンジンの利用する物理法則は、運動量秩序です。この運動量秩序は、永久電流現象の基本原則でありまして、永久電流を構成する電子対すべての重心運動の運動量が一斉に同じ大きさで変化しなければならないということです。この運動量秩序は、超伝導磁石の強い磁界を作る永久電流の流れる方向だけではなく、外部磁場によるローレンツ力が作用する方向にも、働きます。

 【図8】
 

 図8のように、脈流の周波数は、その波長がループの一周の長さと一致する程度の高周波数としていますので、高周波超伝導電磁エンジンの超伝導磁石には、各瞬間において、脈流により生じるローレンツ力がゼロの部分があります。これにより、電磁力の偏りが生じます。
 よって、この電磁力の偏りのために、運動量秩序に従った動きを電子対はすることができません。ローレンツ力の力積は電子対の重心運動を動かすことができませんので、重心運動の運動量に変化しませんで、各超電子の散乱を通じて、最終的には熱エネルギーとして外部に放出されます。
 超伝導磁石の超電流を構成する電子対の重心運動が生じませんので、超伝導磁石に働く電磁力(ローレンツ力)は磁力となりませんで、超伝導磁石の磁力は打ち消された形となります。
 その結果、常伝導のループに働く電磁力、即、磁力だけが残りまして、これを直線的運動エネルギーとして利用できます。


【図面の簡単な説明】
  【図1】図1は新改型超伝導電磁エンジンの「超伝導磁石」の平面図です。
  【図2】図2は新改型超伝導電磁エンジンの「超伝導磁石」と磁石となるループを示した側面図です。
  【図3】図3は超伝導電磁エンジンの基本構造と電磁石の磁力を示した図です。
  【図4】図4は超伝導電磁エンジンの特徴的機能を示した図です。
  【図5】図5は高周波超伝導電磁エンジンの平面図です。
  【図6】図6は高周波超伝導電磁エンジンの側面図です。
  【図7】図7は超伝導電磁エンジンの利用法を示した図です。
  【図8】図8は脈流波形とその特徴を示した図です。


【符号の説明】
 1  磁気シールド
 2  超伝導電磁エンジンの「超伝導磁石」
 3  超伝導電磁エンジンの磁石となるループ
 4  脈流電源
 5  冷却器
 6  ケーブル
 7  高周波超伝導電磁エンジン
 8  物体


【先行技術文献】
【特許文献】
  【特許文献1】特開2007−278265号公報
  【特許文献2】特開2005−185079号公報
【非特許文献】
  【非特許文献1】久保田英文著 「銀河への道」ブイツーソリューション 2009年



2.特許庁の意見

 新改型超伝導電磁エンジンの審判事件に関する出願は、合議の結果、以下の理由によって拒絶をすべきものです

● 理由1(新規事項)について
 平成31年1月8日付け手続補正書でした補正(以下「本願補正」という。)において明細書の段落【0002】、【0008】及び【0010】に追加された記載事項並びに本願補正により追加された図3ないし8は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には何ら記載されておらず、また、自明な事項ともいえず、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるといわざるを得ない。
 特に、段落【0002】等で追加された「高周波超伝導電磁エンジン」に関する事項は、平成31年1月8日の意見書の「3.」及び審判請求書の「備考(1)ないし(7)」によれば、本願補正は、平成30年11月5日付けの拒絶理由で通知された、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとの拒絶理由を解消するために、【先行技術文献】の【特許文献1】(特開2007-278265号公報)の具体的内容を追加したものと理解できるが、先行技術文献に記載された内容を追加して特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)の不備を解消する補正は、新たな技術的事項を導入するものであるので許されるも
のではない(審査基準第IV部第2章新規事項を追加する補正3.3.2 明細書の補正を参照。)。

● 理由2(実施可能要件)について
(1)本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は「磁気シールドで半分程度を覆った『超伝導磁石』に対して固定された位置にあるループに直
流電流を流すことにより、そのループに電磁力、即、磁力を発生させる一方、直流磁界が作用して『超伝導磁石』の永久電流に働く電磁力の力積が運動量に変化しない無効となるので、ループに発生した電磁力、即、磁力を推進力・制動力・浮力として利用する」という発明特定事項を含むものである。
 そして、当該「『超伝導磁石』の永久電流に働く電磁力の力積が運動量に変化しない無効となるので、ループに発生した電磁力、即、磁力を推進力・制動力・浮力として利用する」根拠として、発明の詳細な説明(明細書の段落【0006】)において「『超伝導磁石』の半分程度のみに直流電流の磁界が作用し、磁気シールドに覆われていない部分を流れる永久電流にだけ電磁力が生じるので、電磁力の偏りが恒常的に生じる。よって、その電磁力の力積が運動量に変化しない無効となり、磁力とならないので、ループに発生した電磁力、即、磁力を推進力・制動力・浮力として利用する」と説明している。
 そうすると、本願発明は、超伝導磁石を流れる永久電流に、超伝導磁石に作用する磁界により電磁力が作用することを前提としている。
 しかし、超伝導体が超伝導状態にある場合に外部磁場が遮蔽されることは「マイスナー効果」として知られている。本願発明の超伝導磁石は,そのループに永久電流が流れていることから、当然、超伝導状態にあると認められ、そうであれば、「マイスナー効果」によって、外部磁場は遮蔽され、超伝導体内部には外部磁界が作用しないと考えるのが自然である。したがって、本願明細書に記載されているような、「磁気シールドに覆われていない部分を流れる永久電流に(直流電流の磁界による)電磁力が作用する」ことについて、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が理解し、実施できる程度に技術常識に基づく裏付けがなされているとはいえない。

(2)本願明細書の段落【0002】及び【0005】の記載から、本願発明は、【特許文献1】(特開2007-278265号公報)の「高周波超伝導電磁エンジン」を改良したものであり、原理は当該「高周波超伝導電磁エンジン」と同じであると理解できるので、当該「高周波超伝導電磁エンジン」について記載された特開2007-278265号公報(以下「当該公報」という。)の内容について検討する。
 当該公報の段落【0015】には、「従って、脈流の磁界によるローレンツ力を受けて電子対に生じるはずの運動量、すなわち永久電流が流れる方向に対して垂直な電子対の重心運動の運動量から超伝導コイルの材料が運動エネルギーを得て生じるはずの超伝導コイルに働く電磁力が生じない。これにより常伝導体1に働く電磁力のみが残ることになり、その電磁力を直線的運動エネルギーとして利用できる。常伝導体1に働く電磁力の強さは脈流の強さを変えることでコントロールできる。また、電磁力の強さは、常伝導体のループの長さ、超伝導磁石の長さを変えることで、変化させることができる。また、電磁力の強さは、超伝導磁石の磁界の強さを変えることで、変化させることができる。そして、電磁力の方向は、脈流の方向を逆転させることで、逆転できる。」と記載されており、本願発明は、常伝導ループの磁界によって超伝導磁石に働く磁力が、超伝導磁石の磁界によって常伝導ループに働く磁力より小さくなり、打ち消されずに残る常伝導コイルに働く磁力を推進力として利用するものと認められる。
 しかし、本願発明の「高周波超伝導電磁エンジン」は、超伝導磁石とループとが互いに固定されているところ、仮に、超伝導磁石に働く磁力が常伝導ループに働く磁力より小さいとしても、互いに固定された超伝導磁石とループ間の力は、作用・反作用の法則によりバランスすることになり、結局、本願発明の装置を動かす力は発生しないと考えるのが自然である。
 したがって、当該公報の記載内容を参酌しても、本願発明が作動する原理について、当業者が理解し実施できる程度に技術常識に基づく裏付けがなされているとはいえない。

(3)請求人は、平成30年10月1日の上申書において「超伝導電磁エンジン技術の基本については、拙著『銀河への道』(2009年にブイツーソリューション刊行、「早期審査に関する事情説明書」と共に提出)によって、一般に公開されており、刊行から数年経つことにより、技術常識となっていると考えます。
」と述べており、平成31年1月8日の意見書において「『銀河の道』において
は、超伝≡導電磁エンジンの利用する物理法則が、第3章第2節『超伝導電磁エンジンの原理・運動量秩序』(44〜50頁)において、明確かつ詳細に述べられています。また、『銀河の道』においては、運動量秩序の利用法について、第3章第3節『超伝導電磁エンジンと高周波脈流』(50〜66頁)において、明確かつ詳細に述べられています。」と述べている。
 一般に、技術常識とは、当業者に一般に知られている技術または経験則から明らかな事項をいうものである。
 しかしながら、「銀河への道」に記載された超伝導電磁エンジン技術の基本について、この刊行からの年数を根拠として、技術常識となっているという主張については、単に主張に止まるのみであり、これを裏付ける具体的な根拠が示されているとはいえない。

(4)請求人は、審判請求書の6ないし7ページにおいて「特許出願にかかる発明の場合は、学術論文とは異なり、必ずしも理論的解明が必要とはされない。理由は不明でも、ある作用効果が得られるという場合、発明は成立し特許の対象となる。しかし、その場合でも、当業者が明細書の開示に基づいて当該発明を再現性をもって実施できるように記載されていなければならない。
(『特許判例百選〔第三版〕』有斐閣2004年刊行、79頁、尾崎英男弁護士の解説より)
 この記述で分かるように、特許法は詳しい原理の説明を特許権付与の要件としていません。また、当業者が明細書の開示に基づいて当該発明を再現性をもって実施できるように明確かつ十分に記載するように要求するだけで、当該改良発明の基本となる周知の発明まで明確かつ十分に記載することを要求していません。
 そして、本願発明の明細書は、改良発明である新改型超伝導電磁エンジンについて、目的、構成、効果を明確かつ十分に開示していて、当業者が明細書の開示・に基づいて当該発明を再現性をもって実施できるように記載されているのは、意見書で述べたとおりです。」と述べている。
 しかしながら、本願明細書には、本願発明が作動したという実施結果については何ら開示はない。
 これに関して、上記平成30年10月1日の上申書において、「『高周波超伝
導電磁エンジン』は、私自身が製作したものではありませんが、私がインターネットで公開した情報を基に、2007年に、そのプロトタイプ(ストレンジクラ
フト)が製作されており、機能することが確認されています。その私家版写真集を提出します。」と述べ、私家版写真集「ストレンジクラフトの写真」を提出している。
 しかしながら、当該写真集の「ストレンジクラフト」と、本願発明との関係が不明であり、当該写真集によって、本願発明が機能することを確認することはできない。

 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。

●理由3(明確性)について
 請求項1の「直流磁界が作用して『超伝導磁石』の永久電流に働く電磁力の力積が運動量に変化しない無効となるので、ループに発生した電磁力、即、磁力を推進力・制動力・浮力として利用する」との記載は意味が不明確である。
 上記「●理由2(実施可能要件)について」で述べたように、「『超伝導磁石』の永久電流に働く電磁力の力積が運動量に変化しない無効となる」が、どのような原理によるものなのか発明の詳細な説明の記載を参酌しても不明である。
 また、「ループに発生した電磁力、即、磁力を推進力・制動力・浮力として利用する」との記載について、ループに発生した電磁力を、具体的にどのようにして推進力・制動力・浮力として利用するのかが不明確である。

 よって、請求項1に係る発明は明確であるとはいえない。



3.特許庁への反論

 本件出願は、以下の理由によって特許査定をすべきものです。

● 理由1(新規事項)について
「審査基準第IV部第2章新規事項を追加する補正3.3.2明細書の補正」によれば、先行技術文献に記載された内容を発明の詳細な説明の【背景技術】の欄に追加する補正は許される。但し、出願に係る発明との対比等、発明の評価に関する情報や発明の実施に関する情報を追加する補正は許されないし、先行技術文献に記載された内容を追加して第36条第4項第1号の不備を解消する補正も許されない。
 本願補正は、主として、先行技術文献に記載された内容を発明の詳細な説明の【背景技術】の欄に追加する補正である。
 しかし、改良発明である本願発明と先行技術を対比して評価するものではない。対比については【発明の効果】【0007】で述べている。また、本願発明は、自明な先行技術に対する改良発明であり、その明細書に改良の実施についての不備は無く、補正前に既に当業者に分かるように必要かつ十分に述べられており、追加内容は、当業者以外の一般向けに、単に、改良の対象となる先行技術の説明を追加したものに過ぎない。
従って、平成31年1月8日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件(新規事項)を満たしている。

● 理由2(実施可能要件)について
(1)
「超伝導体が超伝導状態にある場合に外部磁場が遮蔽されることは「マイスナー効果」として知られている。本願発明の超伝導磁石は,そのループに永久電流が流れていることから、当然、超伝導状態にあると認められ、そうであれば、「マイスナー効果」によって、外部磁場は遮蔽され、超伝導体内部には外部磁界が作用しないと考えるのが自然である。」という。
 確かに、外部磁場は遮蔽され、超伝導体内部には磁界ゼロである。しかし、それは、内部に存在する遮蔽電流磁場と外部磁場が打ち消しあっているからであり、超伝導体内部には、遮蔽電流磁場と外部磁場が存在している。外部磁界が作用しないならば、その反作用である磁界も存在しないことになってしまうことからも、超伝導体内部に磁場が存在しないという理解が誤りであることが分かる。
 以上が正しい理解であるから、当業者も当然、私と同じ立場に立っていると考えられる。

(2)
「仮に、超伝導磁石に働く磁力が常伝導ループに働く磁力より小さいとしても、互いに固定された超伝導磁石とループ間の力は、作用・反作用の法則によりバランスすることになり、結局、本願発明の装置を動かす力は発生しないと考えるのが自然である。」
 超伝導電磁エンジンは、超伝導磁石に働く磁力と常伝導ループに働く磁力が釣り合わないことを利用する。超伝導電磁エンジンでは、磁場の偏りが有るときに働く運動量秩序により、超伝導磁石に働く磁力が常伝導ループに働く磁力よりも小さくなるからである。作用・反作用の法則が保障するのは、超伝導磁石に働く電磁力と常伝導ループに働く電磁力が釣り合うことまでであり、発生した電磁力がそのまま磁力となって、釣り合うことまでは保障しない。超伝導磁石に働く発生した電磁力がそのまま磁力とならないように工夫した発明が超伝導電磁エンジンである。改良発明である新改型超伝導電磁エンジンも同じ原理を利用する。この原理については、『銀河への道』第2章と第3章で詳説している。

(3)
「『銀河への道』に記載された超伝導電磁エンジン技術の基本について、この刊行からの年数を根拠として、技術常識となっているという主張については、単に主張に止まるのみであり、これを裏付ける具体的な根拠が示されているとはいえない。」という。しかし、超伝導電磁エンジンは出願人の独創であり、他に資料は無いのだから、一般向けに出版して年数が経つならば、超伝導電磁エンジン技術に関する技術常識となっていると考えるのが常識的である。

(4)
 「本願明細書には、本願発明が作動したという実施結果については何ら開示はない。」という。確かに、新改型の実験については書いていない。
 しかし、高周波超伝導電磁エンジンの実験体と考えられるストレンジクラフトについては、「出現の時期、その形状、特に電磁石のリングと思われるもの、報告されているストレンジクラフトの立てる音や運動の様子からして、超伝導電磁エンジンを船体とする飛翔体と考えられるのです。」(『銀河への道』80頁)など、そう考えられる理由を述べ、『銀河への道』第3章第5節「ストレンジクラフトについて」で詳しく説明している。
 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
従って、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たしている。

●理由3(明確性)について
 改良発明である本願明細書において(【0005】)、改良の対象である「「高周波超伝導電磁エンジン」と同じ原理を用い」と明確に述べている。そして、「高周波超伝導電磁エンジン」の原理は、『銀河への道』で詳説している。
 利用法も『銀河への道』で詳説しており、改良発明である新改型超伝導電磁エンジンの改良点以外に属するので、「高周波超伝導電磁エンジン」と同じ利用法をとるのが自明である。

 よって、請求項1に係る発明は明確である。
 従って、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性)を満たしている。



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