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運動量秩序の研究 (最新版)
(2006年5月5日にネット上に公開しました。)


目次
第1章 基礎理論
☆第1節 ボース・アインシュタイン凝縮と永久電流
☆第2節 電流方向の運動量秩序
☆第3節 電磁力方向の運動量秩序
☆第4節 電磁力方向の運動量秩序により起こる現象
☆第5節 高周波の脈流により起こる現象


第2章 実験方法
第3章 理論的疑問について
第4章 私の装置の利用可能性
第5章 終わりに



★第1章 基礎理論

☆第1節 ボース・アインシュタイン凝縮と永久電流

 超伝導状態においては、ボース・アインシュタイン凝縮が成立していると見なせます。ボース・アインシュタイン凝縮を起こしている原子の重心運動と同様に、永久電流を構成する各クーパー対の重心運動が、同じ大きさの運動量を持った秩序ある状態にあると考えられています。電子はフェルミ粒子であり、パウリの原理に従います。が、クーパー対は一種のボーズ粒子であり、同じ運動量に凝縮することが可能となるとされます。この電子対の凝縮(以下、「電子対凝縮」と略します)が、超伝導状態となった場合における電気抵抗ゼロの完全導電性を保障しています。
 超伝導磁石の強い磁場を発生させる永久電流の流れる方向(以下、「電流方向」と略します)において、この永久電流を構成するクーパー対の運動量を考えます。この電流方向におけるクーパー対の運動が永久電流の実体です。基底状態にあるクーパー対1個を構成する超電子の運動量を、クーパー対を構成する超電子が反平行の運動をしているので、Pと−Pとします。そのクーパー対に電圧を加えたことにより超電子が持つ運動量をQとします。このクーパー対1個の運動量は、2Qとなります。この2Qが永久電流を運ぶことになります。
(P+Q)+(−P+Q)=2Q
 この永久電流に磁場を加えたとします。フレミング左手の法則によれば、外部磁場により、電流が流れる方向に垂直な方向(以下、「電磁力方向」と略します)にローレンツ力が発生します。この磁場によるローレンツ力が永久電流に働き、超電子の運動量が変化します。ローレンツ力の強さは、磁場の強さと永久電流の強さに比例します。運動量Pの超電子の運動量変化をΔPとします。すると−Pの超電子の運動量変化は−ΔPとなります。運動量Pと−Pの運動の向きが逆なので、働くローレンツ力の向きも逆となるからです。そして、運動量Qの変化をRとします。この場合のクーパー対の運動量は2Q+2Rとなります。
(P+ΔP+Q+R)+(−P−ΔP+Q+R)=2Q+2R
運動量Pと−Pの変化分はクーパー対の反平行の運動により打ち消されてしまうので、Pと−Pを変化させたローレンツ力は、クーパー対としては打ち消された格好になります。しかし、Qに対する運動量変化は残り、これが電磁力として超伝導コイルに働くと考えられます。そして、電子対凝縮が成立するためには、各電子対において、2Q+2Rの大きさが一致する必要があります。
そのために、電流方向と電磁力方向の双方において、運動量秩序が成立すると考えます。運動量秩序とは、クーパー対の運動量が、ある一致した運動量から、他の一致した運動量に変化し、その変化の際にすべての対が一斉に変化することです。

ボース・アインシュタイン凝縮に不案内な方は、大阪市立大学素励起物理学研究室坪田誠教授著の「ボース・アインシュタイン凝縮とは何か」 を参考にしてください。丁寧で正確な記述がなされています。
超伝導の基礎理論に不案内な方は、早稲田大学理工学部「栗原研究室」の「超伝導とは」を参考にしてください。丁寧で正確な記述がなされています。

☆第2節 電流方向の運動量秩序

 電流方向において、永久電流を構成するクーパー対の運動量を考えます。電流方向、電磁力方向の両方において、運動量秩序が成立しないとします。電流方向において運動量秩序が成立しないので、2Qの大きさは各電子対により異なることになります。そして、この永久電流に均一な磁場を加えたとします。均一な磁場ですので、電磁力方向の運動量2Rは、電流方向の運動量2Qの大きさに比例します。よって、この電子対の全体としての運動量2Q+2Rの大きさは、電流方向の運動量2Qの大きさに比例します。この2Qの大きさが電子対により異なると考えるので、全体としての運動量の大きさが異なることになります。これでは、電子対の全体しての運動量が一致せず、電子対凝縮が成立しなくなってしまいます。ですから、2Qの大きさは、全電子対で一致すると考えます。
 永久電流は一定値の電流が一定方向に永久的に流れます。この一定値の運動が生じるために、クーパー対の全体としての運動量だけではなく、電流方向においてもクーパー対のそれぞれが同じ運動量を持った秩序ある状態にあると考えられるのです。そして、電流方向において、運動量の一致するクーパー対が、ある運動量から、ある運動量に変化する場合、すべての対が一斉に変化します。バラバラに変化すると、運動量が変位する間に抵抗を受け、完全導電性が崩れてしまいます。これらが、完全導電性を保障していると考えます。従って、電流方向において、運動量秩序が成立します。


運動量秩序について
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☆第3節 電磁力方向の運動量秩序

 電磁力方向において、永久電流を構成するクーパー対の運動量を考えます。今まで、超伝導によって生じるマクロな量子効果「運動量秩序」は電流方向を念頭においていました。それを電磁力が発生する方向にも考えます。
電流方向においては運動量秩序が成立し、電磁力方向においては運動量秩序が成立しないとします。電流方向において同じ大きさの2Qの運動量を共通して持つクーパー対により構成された永久電流に、不均一な磁場を加えてみます。電流方向の運動量が一致するので、ローレンツ力の大きさは、不均一な磁場のある部分の強さに比例することになります。不均一な磁場の各部分の強さに従って、電磁力方向の運動量2Rの大きさが異なることになります。電流方向において2Qの運動量を共通して持つので、2Rの大きさに従って、電子対が持つ全体としての運動量2Q+2Rの大きさが異なることになります。これでは、電子対の全体しての運動量が一致せず、電子対凝縮が成立しなくなってしまいます。ですから、2Rの大きさは一致すると考えることになります。電磁力方向においても運動量秩序が成立すると考える必要があります。
 外部磁場による運動量2Rも運動量秩序に従うと考えます。すなわち、永久電流を構成するクーパー対の運動量2Rは同じ大きさを持ち、同じ大きさに一斉に変化すると考えるのです。運動量秩序を電流に対して垂直な電磁力方向に拡張して適用するのです。こう考えれば、この場合においてもクーパー対1個の運動量2Q+2Rの大きさが一致することになり、クーパー対が同じ運動量に凝縮する電子対凝縮が問題なく成り立つと考えらます。
 従って、電子対は電磁力方向にも運動量秩序に従った動きをして、電磁力を超伝導コイルの材料に伝えていることになります。
 運動量秩序を超伝導磁石における電子対の重心運動の波動で考えます。電流方向では、超伝導コイルとなる電線の全長を弦の長さとする定在波(定常波)となっていると考えます。波長の正の整数倍が弦の長さと一致します。同様に、電磁力方向では、超伝導コイルとなる電線の直径の長さを弦の長さとする定在波となっていると考えます。但し、半波長の正の整数倍が弦の長さに一致します。電流方向において電子対の重心運動が量子化されているとともに、電磁力方向においても電子対の重心運動が量子化されているので、電子対の全体としての重心運動も量子化されています。そして、電流方向に加えて電磁力方向でも電子対の重心運動の運動量が一致することにより、電子対の全体としての運動量が量子化されたある値に一致して電子対凝縮が成立すると考えるのです。


【図1】 磁場による運動量の一斉変化の例


☆第4節 電磁力方向の運動量秩序により起こる現象


 これから、超伝導磁石に時間的に変化する外部磁場を与えた場合を考えてみます。電磁力方向にも運動量秩序が生じている結果、次のような現象が起こるのではないかと考えられます。すなわち、運動量秩序に従った運動を起こすのに適さない移動する磁場を加えると、運動量秩序に規制されることが原因で、ローレンツ力を受けてクーパー対の重心運動が電磁力方向に運動量を変化させようとしても、変化させられないのではないかと考えられます。移動する磁場が時間的に変化し、超伝導コイルの各所に異なる大きさの磁場を生じさせるなら、永久電流を構成するクーパー対の運動量を変化させるはずのローレンツ力による力積(力×時間)が働いても運動量を変化させる用をなさないことが考えられるのです。この磁場による力積に従い、そのままクーパー対の重心運動が運動量を変化させるとすると、クーパー対の外部磁場による運動量変化2Rが個々のクーパー対により異なることになってしまうからです。従って、2Rがそのような異なる値をとることを運動量秩序が許さずに規制して、ローレンツ力による力積が運動量を変化させるのを許さないと考えられます。しかし、運動量秩序による規制にも限界があると考えられます。
 まず、ある時点において空間的に考えてみます。移動する磁場が、強さが異なるが一定の強さ以上の磁場を超伝導磁石各所の電子対の重心運動に与えた場合を考えます。この場合、その一定の強さ以下の揃った磁場によるローレンツ力は運動量秩序に反しないので、このローレンツ力の力積は運動量に変化しても問題はないと考えます。これに対して一定の強さを越える磁場に従ってそのままローレンツ力の力積が運動量に変化すると運動量秩序が乱されます。従って、一定の強さを越える磁場の分によるローレンツ力の力積は運動量に変化しない必要が生じると考えられます。
 次に時間的変化を加えて考えてみます。ここで、磁場によるローレンツ力の影響が、超伝導磁石各所の電子対すべてにおいて、一定の時間内に一定の大きさ以上の力積に達する場合が考えられます。この力積により、超伝導磁石のそれぞれの電子対には一定の大きさ以上の運動量が生じ得ます。従って、その一定の大きさまでの揃った運動量はなんら運動量秩序に反しないので、その一定の運動量だけ電子対はそろって運動量を変化させると考えられます。
 力積と力積により生じる運動量に一定の値を考えるのは電子対も量子だからです。電磁力方向において、一つの電子対の運動量がある運動量から一つ上の量子数の運動量まで変化するのに、必要な力積をkとします。一定の時間を考えるのは、その間に力積が重心運動の運動量に変化しなければ、重心運動の運動量を変化させる力積として用をなさなくなると考えるからです。この一定の時間をt秒とします。用をなさなくなった力積は、電子対の重心運動の運動量に変化せず、電子対ではなく各電子のエネルギーに転化すると考えます。そのエネルギーは具体的には、各電子の反平行運動のエネルギー、すなわちPの増大や各電子の振動のエネルギーとなると考えます。電子対の重心運動を動かすことができないので、動かすことの可能な各電子のPや振動の増大に転化すると考えるのです。しかし、このエネルギーによる熱を心配する必要はありません。このエネルギーが加わっても、クーパー対のミクロな運動に不規則・乱雑性が無いことには変わりありません。クーパー対の集合である永久電流は電気抵抗ゼロで永久的に流れ続けます。抵抗ゼロであるということは、抵抗により生じる熱もゼロであるということです。クーパー対は熱には寄与しないのです。そして、これらのエネルギーは、振動自体に必要なエネルギーとして消費されたり、反平行運動を維持するためのエネルギーとして消費されたりします。その残りのエネルギーが、操作して超伝導磁石を常伝導状態に切り替えた後に、最終的に熱として放出されることがあるということです。

   量子数1から2の状態まで、全電子対の運動量が変化するためには、一定の時間t内に、すべての電子対にk以上の力積が与えられる必要があると考えます。ですから、t秒の間に受ける力積がkに達しない電子対が存在するならば、量子数2への変化は生じません。次のt秒について考えます。次のt秒の間に受けた力積と前のt秒の間に受けた力積の合計が、k 以上に達しない電子対が存在するならば、前のt秒の間に電子対が受けた力積は、t秒経過しているので、すべて各電子のエネルギーに転化します。ですから、2t秒の間に受けた力積がk 以上に達しない電子対が存在するならば、時間とともに力積が累積することはなく、量子数2への変化が恒常的に生じないことになります。
次に、量子数がnの状態から、n+m(nとmは正の整数)の状態に変化する場合を考えます。nからn+mの変化において、一つでもmkに満たない力積しか与えられない電子対があると運動量秩序による規制のためにn+mへの変化は生じないことになります。任意の量子数nから任意の量子数n+mの変化が生じるには、運動量秩序による規制のために、全電子対にmk以上の力積が与えられる必要があります。
一定の時間t内に、ある電子対に与えられた全電子対中で最小の力積を考えます。その力積が量子数をn+m+1まで変化させるのに必要な力積(m+1)kに満たないが、n+mまで変化させるのに必要な力積mk以上であるとします。この場合、一定の時間t内に、電子対すべてにmk以上の力積が与えられているので、全電子対の運動量が量子数n+mの状態に変化します。しかし、一定の時間t内に電子対が受ける最小の力積が、(m+1)kに満たないので、運動量秩序による規制のために、量子数n+m+1への変化は生じません。この時間t内に各電子対に与えられたmkを超える部分の力積は各電子のエネルギーに転化する可能性が生じます。次のt秒後について考えます。次のt秒の間に受けた力積と前のt秒の間に受けた力積の合計が、(m+1)k 以上に達しない電子対が存在するならば、前のt秒の間に電子対が受けたmkを超える力積は、t秒経過しているので、すべて各電子のエネルギーに転化します。ですから、2t秒の間、受けた力積が(m+1)k 以上に達しない電子対が存在するならば、時間とともに力積が累積することはなく、量子数+mの変化しか生じないことになります。従って、mkを超える力積はすべて転化してしまいますが、+mの変化分(mkの力積分)が累積して電磁力が生じえます。
以上により、運動量秩序の規制により、重心運動の運動量に変化せずに各電子のエネルギーに転化する力積が生じることがあり、その力積の分だけ、電磁力の打ち消しが生じると考えることになります。



【図2】 脈流波形



☆第5節 高周波の脈流により起こる現象

 常伝導体を重ね合わせるように超伝導磁石に固定し、その常伝導体の一回巻きのループに高周波の脈流(波形は図2のようなものです)を流す場合を考えてみます。波長はループの一周の長さと一致させます。この脈流は0から一定の大きさまで時間的に変化して流れ、超伝導コイルの各所に異なる大きさの磁場を時間的に変化して与えることができます。
 脈流の速度と永久電流の運動速度を考えてみます。脈流は交流から作るので、脈流の山の移動速度は光速度と考えてよいことになります。これに対し、永久電流の方はローレンツ力を受ける電子対の運動を考える訳ですから、山の移動速度よりも遅くなります。しかし、脈流の速度が電子対の運動速度よりも速いことは問題とならないと考えます。脈流の磁場が異なる大きさのローレンツ力を各電子対に与えながら、追い抜いていくことになります。ですから、永久電流を構成する電子対が脈流から受けるローレンツ力の強さは脈流の強さに従って異なることになります。従って、運動量秩序による規制が働きます。
 そして、脈流は断続的に流れます。電流が流れる時間と電流が流れない時間が交互に現れ、その時間は同じです。従って、波長が一周の長さと一致しているため、各瞬間において、超伝導磁石の半分の部分の電子対は受けるローレンツ力がゼロです。各瞬間において、ローレンツ力ゼロの力積が存在するので、運動量秩序の規制が働きます。そして、二分の一周期の時間、連続して、受けるローレンツ力がゼロの電子対が必ず存在することになります。二分の一周期の時間は2tよりも大きくなると考えます。
 各電子対に働く力積がすべて一定の時間2t内に一定の大きさ、sk(sは1以上の比較的小さな整数)以上に達することがなく、電子対の電磁力方向の運動量をすべて一定の大きさ以上に揃わせることのできる力積(sk以上)が累積する事がありません。脈流の特徴ゆえに、各所の電子対に与えられる力積が2t内にすべて一定の大きさ以上(sk以上)の力積に達することはないと考えられます。従って、電子対と電子対が構成する永久電流は電磁力方向に(s−1)k分しか運動量を変化させることができないことになります。2t秒の間に受けた力積がsk 以上に達しない電子対が存在するので、時間とともに力積が累積することはなく、sk以上の力積に相当する運動量変化が恒常的に生じないことになります。そして、(s−1)k分の運動量変化が時間的に累積して電磁力が生じても、累積するまで時間がかかるので、断続的にしか生じないことになります。ですから、超伝導コイルの材料が電子対から運動量を受け取って生じるはずの超伝導磁石の電磁力が生じないか、極めて小さいことになります。
 私の考える脈流において電子対の受けるローレンツ力が、ゼロの時間、すなわち脈流の二分の一周期は、2tに比べて大きなものになると考えます。したがって、sが1であること、すなわち運動量変化が連続してゼロであることが期待できると考えます。
 私はこの高周波の脈流によって超伝導磁石に生じる現象を産業技術に応用しようと考えました。


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