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超伝導とは何か?
─運動量秩序再説─

久保田英文著

目次
1.超伝導と運動量秩序
(1)超伝導現象
(2)BCS理論と基底状態
(3)永久電流と運動量秩序
2.運動量秩序と高周波超伝導電磁エンジン
(1)運動量秩序の規制と磁力の消滅
(2)高周波超伝導電磁エンジンにおける運動量秩序の規制
(3)反作用の行方
参考文献

※本文中のリンクはウィキペディアへのものです。
マイスナー効果
Meissner effect: levitation of a magnet above a superconductor
From Wikimedia project
Mai-Linh Doan
Own work, copyleft: Multi-license with GFDL and Creative Commons CC-BY-SA-2.5 and older versions (2.0 and 1.0)


1.超伝導と運動量秩序

(1)超伝導現象

超伝導体をある温度(臨界温度)以下に、冷やすと超伝導現象が生じます。
超伝導現象は、永久電流とマイスナー効果に代表されます。
永久電流とは、電流が電気抵抗ゼロで永久的に流れる現象です(完全導電性)。
マイスナー効果とは、一定の強さの磁場(臨界磁場)よりも弱い外部磁場を超伝導体に加えた場合、
超伝導状態においては、超伝導体内部の磁場(磁束密度)が、ゼロになる現象です。
この現象は、
外部磁場に誘導された永久電流が作る磁場が
外部磁場による超伝導体内部の磁場を打ち消すことによって起こります。
また、マイスナー効果の性質を完全反磁性と呼びますが、
超伝導体がまったく磁場の侵入を許さないわけではありません。
表面の「侵入深さ」の範囲にわたって、磁場(磁束密度)が侵入しています。
それに、完全反磁性の領域でも磁場強度(H)は存在します。
存在する(+H)と存在する(−H)が打ち消し合って、磁束密度(B)がゼロになっているのです。
そして、第1種超伝導体においては、
永久電流である遮蔽電流と輸送電流(電圧を加えられて生じる)も表面の領域を流れます。

この超伝導現象を説明した現象論が、ロンドン理論とギンツブルグ・ランダウ理論です。
ロンドン理論はロンドン方程式により、完全導電性とマイスナー効果を表現します。
ギンツブルグ・ランダウ理論は、
ギンツブルグ・ランダウ方程式を満たす一つの波動関数により、
超伝導状態にある電子の集団を記述します。
現象論からの推論によれば、
超伝導現象が生じるのは、
超伝導状態の自由エネルギー常伝導状態の自由エネルギーよりも低いからだということになります。
この自由エネルギーの低下をもたらしているのは、超伝導状態の秩序だと考えられます。
そのような秩序の実体として考えられるのは、
超伝導現象を起こしている電子すべてが同じ位相波長を持つコヒーレントな状態に凝縮していることです。
同じ波長であるということは、ド・ブロイの関係(p=h/λ)により、同じ運動量にあるということです。
しかし、電子はフェルミ粒子であり、パウリの排他原理に従うので、
同じエネルギー準位をスピンが異なる二つの電子しか占めることができません。
同じエネルギーになれないということは、同じ運動量になれないことを意味します。

運動量: mv
運動エネルギー: mv^2/2

これでは、電子すべてが同一の運動量に凝縮するのが不可能です。
これを解決し、超伝導現象の実体を解明したのが、BCS理論です。


(2)BCS理論と基底状態

図1 ある瞬間のクーパー対
BCS理論によれば、基底状態において、
運動方向とスピンの向きが反対で運動量の大きさが同じ電子がペアを組み(クーパー対)、
反平行の運動をしています。
ペア間の引力は、フレーリッヒの電子-フォノン相互作用が与えます。
この反平行の運動をしている状態は、電子間に負の相互作用が働いている状態であり、
電子が束縛し合っている状態なので、負の相互作用分だけ、
電子が独立に運動している状態よりも低いエネルギーを持つことになります。
ですから、この対状態は、凝縮しているクーパー対が多ければ多いほど、
低いエネルギー状態を持ちます。

そして、クーパー対を構成する電子が
対相関の状態(反対向きのスピンと方向、それに同じ大きさの運動量を持った電子が揃う)で、
フェルミ面の上と下のエネルギー準位に、
ある一定の確率で並ぶことにより、最大のエネルギー低下が得られます。
加えて、クーパー対は、スピンが反対の電子二つから成り立っているので、
ボース粒子と見なせます。
ボース粒子にはパウリの排他原理は適用されません。
したがって、ボース粒子であるクーパー対は同じ運動量に凝縮できます。
反平行運動の運動量は互いに打ち消しあいますので、
基底状態においては、クーパー対すべての運動量がゼロということになります。
このとき、各電子対の確率波は、運動量がすべて同じなために波長が同じとなります。
また、クーパー対すべてが完全に調子を合わせて回転していると考えられるので、位相も同じとなります。
クーパー対すべてが同じ位相と波長を持つので、
重なり合いの効果が生じてマクロな量子効果を示すこととなります。

このクーパー対一つを壊すのに最小限必要なエネルギーがエネルギーギャップ(2Δ)です。
クーパー対一つを壊すのに必要なエネルギーですから、
クーパー対全体の運動量から見た運動エネルギーを考えれば十分です。
しかるに、反平行運動の運動量は反平行の方向の運動をしているので、打ち消しあっています。
運動量はベクトルです。
方向と大きさを持っています。
反平行の方向ですので、大きさが同じですから打ち消しあいます。
したがって、ボース粒子とみなされるクーパー対が持っている運動量は、
クーパー対の重心運動の運動量だけです。
ですから、クーパー対全体の運動量は重心運動の運動量だけとなります。
この重心運動の運動量がエネルギーギャップに相当する運動エネルギーを与えられた時に、
一つのクーパー対が崩壊することになります。


(3)永久電流と運動量秩序

クーパー対はエネルギーを与えると基底状態から励起されて、ゼロではない運動量を持ちます。
これが永久電流です。
永久電流を構成するクーパー対すべてが同じ運動量に凝縮しています。
ゼロではない場合も運動量の大きさがすべて同じです。
この時、クーパー対すべてが同じ位相と波長を持つので、
重なり合いの効果が生じてマクロな量子効果を示すこととなります。
その同じ運動量とは具体的には、クーパー対の重心運動の運動量を指します。
他方、反平行運動の運動量が互いに打ち消しあっているのは、基底状態と同じです。
よって、クーパー対は常に重心運動の運動量が同じ大きさでなければなりません。
運動量の大きさが同じなので運動エネルギーの大きさもすべて同じです。
ですから、常に重心運動の運動エネルギーが同じ大きさでなければなりません。

そして、クーパー対も量子ですので、
エネルギーはエネルギー準位に従ったとびとびの値を示します。
常に重心運動の運動エネルギーが同じ大きさでなければならないので、
クーパー対の運動エネルギーは、
あるエネルギー準位から次のエネルギー準位まで一斉に変化します。
つまり、運動エネルギーが一斉変化するということは、
重心運動の運動量があるエネルギー準位から、次のエネルギー準位まで、
一斉に変化するということです。
超伝導状態においては、クーパー対の運動量は、あるエネルギー準位から、
次のエネルギー準位まで、一斉に変化しなければならないのです。
私はこのことを「運動量秩序」と呼んできました。

 永久電流が電気抵抗ゼロを示す完全導電性のメカニズムを説明します。
常伝導状態で電気抵抗が生じる原因は、格子振動と格子欠陥・不純物原子です。
格子振動による電気抵抗は温度に比例して低下しますが、
格子欠陥・不純物原子はそうではなく、絶対零度でも残留抵抗として残ります。
格子振動による電気抵抗が温度に比例して減少することによっても、
低温で超伝導現象が生じやすくなっていると考えられます。

 まず、格子振動による電気抵抗をクリアするメカニズムです。
 ある電子が正に帯電した格子との間でクーロン力が働いてエネルギーを奪われたとします。
「 ここで、この格子振動を誘起した電子と十分近い位置に他の電子が居るものとしよう。
最初の電子が格子の引力相互作用によって格子間距離が狭まることになるので、
その領域は局所的に正電荷の濃度がまわりより高くなっている。
すると第二の電子は、図(b)のように、この正電荷濃度の高い領域から引力を受ける。
つまり、加速されることになる。
言い換えれば、最初の電子は、格子にエネルギーを奪われるが、
第二の電子は逆に格子からエネルギーを奪うことができるのである。」

(『やさしい超伝導のおはなし4』2頁) 
これが超伝導機構です。

 この格子振動による電気抵抗をクリアするメカニズムによっては、
格子欠陥・不純物原子による電気抵抗の消失を説明できないと考えられます。
これらは物理的衝突によるものだからです。
 ここで、運動量秩序を考えてみましょう。
格子欠陥・不純物原子による電気抵抗のメカニズムが一部のクーパー対に働いたとしましょう。
これにより、一部のクーパー対の重心運動が
エネルギー準位を変化させるに足るエネルギーのやりとりをしたとします。
他方、一部を除いたクーパー対は、抵抗ゼロであり、
エネルギー準位を変化させるに足るエネルギーをやりとりしていません。
従って、運動量秩序に従えば、
すべてのクーパー対が他のエネルギー準位に変化することができません(運動量秩序の規制)。
それゆえ、すべてのクーパー対の重心運動の運動量は以前のまま変わらず、
永久電流の強さは変わらないことになります。
永久電流が減衰するとすれば、
クーパー対の重心運動の運動量がすべて一斉に小さくなる場合に限られるのです。
「電流が流れるのを妨げるただ一つの散乱過程は、電流の向きに対の全運動量が変わる場合であり、
そして対が破れる場合にのみこれが生ずる。
しかし、この対の破壊は、最小のエネルギー量として2Δを要し、
そこでこの散乱はもしこのエネルギーが他から供給されることが可能な場合にのみ起こる。
低い電流密度の場合にはこのエネルギーが対に伝達される方法がなく、
そこで対の全運動量を変える散乱は完全に妨げられるので抵抗がない。」
(『超電導入門』134〜135頁)

 この場合に働く具体的な超伝導機構は、
電子の反平行運動の運動エネルギーと電子対の重心運動の運動エネルギーの間で
エネルギーのやりとりをすることでしょう。
 詳しくは拙著「第二の超伝導機構」をご覧下さい。



2.運動量秩序と高周波超伝導電磁エンジン

(1)運動量秩序の規制と磁力の消滅

臨界温度以下で、リングに沿って永久電流が周回している超伝導線の閉回路を考えます。
このリングの一部(aの部分)のみに臨界磁場以下の十分な強さの外部磁場を加えたとします。
残りの部分(bの部分)には、加えられる磁場はゼロとします。
この外部磁場により生じる遮蔽電流の大きさを考慮した上で、
永久電流の強さは臨界電流密度以下だとします。

初めに、このリングを周回する永久電流を構成するクーパー対すべての重心運動は同じ運動量を持っています。
しかし、aは外部磁場からエネルギーをもらいます。
磁場が十分の強さなので、
このエネルギーはクーパー対を次のエネルギー準位に変化させるのに十分な大きさとなります。
他方、bは磁場ゼロなので、
クーパー対を次のエネルギー準位に変化させるエネルギーは得られません。
このケースは、臨界温度以下かつ臨界磁場以下かつ臨界電流密度以下なので、超伝導状態にあります。
超伝導状態にあるので、
クーパー対は、同じエネルギー準位から次のエネルギー準位まで一斉に変化しなければなりません。
そのためには、aの部分のクーパー対のみならず、
bの部分のクーパー対も次のエネルギー準位に変化させるのに十分な大きさのエネルギーを得る必要があります。
しかし、この条件は満たされず、bの部分の得たエネルギーはゼロです。
したがって、bの部分のみならず、aの部分のクーパー対も次のエネルギー準位に変化できません。
すなわち、クーパー対の重心運動の運動量の大きさに変化はないということになります。
このことは大きな意味を持ちます。

リングが外部磁場により、磁力を発生させるメカニズムは次のようなものです。
外部磁場により、
電子がローレンツ力を受けます。そのローレンツ力を受けた電子は運動量を持ちます。
電子がこの運動量をリングの材料に与えます。
リングの材料が運動量を受けるということは、リングが力積(力×時間)を受けるということです。
この「力積」の「力」が磁力となるのです。
ですから、磁力の元はローレンツ力を受けた電子の運動量です。
しかるに、クーパー対の重心運動の運動量の大きさに変化はないのです。
したがって、磁力の元が無いことになり、外部磁場に基づく磁力がリングに発生しません。
以上の現象を応用した発明が高周波超伝導電磁エンジンです。


(2)高周波超伝導電磁エンジンにおける運動量秩序の規制

図2 高周波超伝導電磁エンジンの基本構造と通常の電磁石の機能(矢印)
図3 高周波超伝導電磁エンジンの特徴的機能(赤色の×印)


まず、高周波超伝導電磁エンジンの構造と特徴を説明します。
高周波超伝導電磁エンジンは電磁石(電線を輪の形に巻いて電流を流すもの)二つを重ねたものです。
その二つの電磁石の中の一つは、一回だけ巻いた常伝導の電磁石です。
もう一つは、超伝導磁石です。
超伝導磁石は、
第2種超伝導体を流れる永久電流の利用により、
強い磁場を安定的に発生させる電磁石です。
第2種超伝導体において、電流は金属の全体にわたって流れます。
二つの電磁石は離れないように固定します。
常伝導磁石には、ある特殊な電流を流します。
超伝導磁石は超伝導状態となるので永久電流が流れます。

次に、高周波超伝導電磁エンジンを離れて、
普通の電磁石を二つ重ねて固定した装置を机の上に置いて電流を流した場合を考えてみましょう。
電流を流したので磁場が発生し、二つの電磁石の間には磁力が働きます。
一つの電磁石に働く磁力ともう一つの電磁石に働く磁力は作用・反作用の法則に従い、
同じ大きさで方向が反対のはずです。
一つの装置に同じ大きさで方向が反対の力が働くので、
この二つの力は打ち消しあい、この装置は当然、動きません。
しかし、もし何らかのメカニズムによって
二つの磁力の中の一方が打ち消されると同様の効果が生じるならば、どうなるでしょうか。
すると、この装置には、一方向の磁力が働きます。
この装置には、ある大きさの力が一方向に働くことになります。
この力の方向が上向きで、装置に働く重力よりも大きければ、
この装置は上に向かって、運動します。
重力に反して上方向に運動するので、無反動推進による反重力装置が実現したことになります。

このように、二つの磁力の中の一方が打ち消される効果が生じるメカニズムが、
高周波超伝導電磁エンジンに働くのです(図3の×印)。
高周波超伝導電磁エンジンにおいては、
運動量秩序の規制が働いて、
各電子対に働くローレンツ力が運動量に変化することを妨げるメカニズムが作動するのです。
このことを高周波超伝導電磁エンジンにおいて、確かめてみましょう。
図4 脈流波形(青色の線)



高周波超伝導電磁エンジンを構成する常伝導の一回巻の電磁石には特殊な電流を流します。
この電流は、脈流です。
脈流は交流を整流して一方向にだけ断続的に流れる電流のことです。
しかも、この脈流の波長が輪の一周の長さ(超伝導磁石の一周の長さ=常伝導の電磁石の一周の長さ)と
同じ長さに一致する程度の高周波数のものを流すこととします。
計算すれば超短波電流程度の周波数となります。
この脈流の作る磁場が、超伝導磁石を流れる永久電流に電磁力を働かせます。
すなわち、永久電流を構成する電子対に、ローレンツ力を働かせます。

高周波超伝導電磁エンジンを構成する常伝導の電磁石を流れる脈流が作る磁場について考えてみましょう。
電流が作る磁場の強さは、電流の強さに比例します。
ですから、脈流も脈流波形のY軸方向の高さに比例した強さの磁場を発生させます。
脈流は断続的に流れるので、波形の高さがゼロの部分が半分存在し、その部分が作る磁場の強さはゼロです。
では、常伝導の電磁石を流れる脈流が、超伝導磁石の輪の上に作る磁場の強さはどうなるでしょうか。
これは、脈流の中、超伝導磁石の輪の上を流れる部分の脈流の強さに比例します。
ここで、流れる脈流は、波長が輪の一周の長さと同じ長さに一致する程度の高周波数であることが意味を持ってきます。
「脈流の波長≒超伝導磁石の一周の長さ=常伝導の電磁石の一周の長さ」という関係が成立しますから、
超伝導磁石の輪の上を流れる部分の脈流は、常に、脈流の波形ほぼ一個分に相当します。
脈流波形の一個は、ほぼ半分が電流ゼロの部分となります。
この電流ゼロの部分が作る磁場の強さはゼロです。
すなわち、脈流が、超伝導磁石の輪の上に作る磁場の強さは、常に半分の部分において、ゼロとなります。
したがって、この部分の超伝導磁石を構成するクーパー対が受けるエネルギーはゼロです。

のこりのほぼ半分の部分において電子に働くローレンツ力の強さは、磁場の強さに比例します。
ですから、ゼロから脈流波形の最高の高さまで、
超伝導磁石のこの部分に存在するクーパー対に働く磁場の強さが異なることになります。
異なった強さの磁場に従って、異なった大きさのエネルギーを各クーパー対が受けることとなります。
この状況は、2.(1)「運動量秩序の規制と磁力の消滅」の場合と本質的に同じです。
したがって、超伝導磁石に磁力が働かないこととなります。
よって、常伝導体に働く磁力のみが残り、
それを推進力として利用できるので、無反動推進が可能となります。


(3)反作用の行方

2.(1)「運動量秩序の規制と磁力の消滅」のaの部分の受けたエネルギーや
高周波超伝導電磁エンジンにおいて
クーパー対の重心運動を変化させられなかったエネルギーはどこへいったのでしょうか。
運動量秩序の働きにより、重心運動を動かせなかったので、
動かすことのできる反平行運動のエネルギーに転化し、蓄積されると考えます。
反平行運動はどれくらいのエネルギーを蓄積できるのでしょうか。
この反平行の運動をしている状態は、電子間に負の相互作用が働いている状態であり、
電子が束縛し合っている状態なので、負の相互作用分だけ、
電子が独立に運動している状態よりも低いエネルギーを持つことになります。
反作用を転化・蓄積したどの時点においても、
非常に大きなエネルギーを受けた時点でも、
単独でいるよりも、対状態でいる方がエネルギーは低い。
加えて、大きなエネルギーを受けて運動していても、
超伝導状態にあるので電気抵抗を働かせる衝突のメカニズムによっては摩擦熱を生じさせません。
ジュール熱が生じないので、超伝導が崩壊することもありません。
ですから、非常に大きなエネルギーを受けても対状態のままでいてエネルギーを蓄積すると考えられます。
それゆえ、超伝導電子すべてがフェルミエネルギーよりも大きいエネルギーとなることも考えられます。
しかし、超伝導電子すべてがフェルミエネルギーよりも大きいエネルギーとなると考えることは明らかに不合理です。
なぜなら、エネルギー準位の数は電子の数と同じだからです。
したがって、蓄積できるエネルギーの限界はフェルミエネルギーになると考えられます。

よって、反平行運動は理論上莫大な反作用を蓄積できます。
ただし大きな反作用を蓄積すれば、
超伝導磁石を常伝導状態にしたときに、
それだけ大きな熱を放出するので、
冷却機を働かせながら、徐々に超伝導状態から常伝導状態に移行する必要が生じます。

BCS理論によれば、
1つのクーパー対をこわしてばらばらな二つの独立した電子にするのに必要なエネルギーは、
引力の相互作用の大きさとすでに凝縮しているクーパー対の数の積で与えられます。
ですから、そのエネルギーは絶対零度で最も大きく、
温度を上げていくと少なくなる関係にあり、
温度がある程度高くなると加速度的に少なくなり、
対の数が雪崩的にゼロに向かい、
さらに高くなって臨界温度に達すると終にはゼロとなり常伝導状態になります。
であるなら、温度が十分低ければ、
すでに凝縮しているクーパー対の数は十分大きく、
1つのクーパー対をこわしてばらばらな二つの独立した電子にするエネルギーも十分に大きくなります。
ですから、その温度差を利用して徐々に熱の解放を行えます。

加えて、反平行運動のエネルギーに蓄積されず、吸収された反作用が熱放射として放射され、
エンジン運転中に冷却機から排熱されることも考えられます。
そして、中には壊れるクーパー対も出てくるでしょう。
その過程で、運動エネルギーは熱に変換されますが、
運転中の冷却機により排熱されるでしょう。
なので、低温は維持され、
新しいクーパー対も生まれてくるでしょう。
運転の最初から十分温度を低くしておけば効果的と考えられます。



参考にした文献

『超電導入門』 (単行本)
A.C.ローズ・インネス (著), E.H.ロディリック (著), 島本 進 (翻訳)
単行本: 233ページ
出版社: 産業図書 (1978/12)
ISBN-10: 4782810059
ISBN-13: 978-4782810057
発売日: 1978/12

初心者にとっては難しい数式を用いていますが、
定性的説明が十分になされています。
正確で確実な議論を知りたい方にお勧めします。
しかし、高温超伝導は記述されていません。

『超伝導 --- マクロな量子現象』
早稲田大学理工学部物理学科教授
栗原 進(著)
http://www.kh.phys.waseda.ac.jp/superconductivity@.html

BCS理論について定性的に分かりやすい説明がなされています。
一度ご覧になることをお勧めします。




『超伝導の世界―なぜ起こる?どう使う?』 (ブルーバックス)
大塚 泰一郎 (著)
新書: 319ページ
出版社: 講談社 (1987/11)
ISBN-10: 4061327070
ISBN-13: 978-4061327078

この本は私が最初に超伝導を学んだ本です。
簡単な数式を用いており、定性的説明が主体です。
運動量秩序が、
5章「模索の時代」の「超電子は秩序ある運動をする」の項(136〜138頁)や、
6章「BCS理論の登場」の「マイスナー効果と完全導電性」の項(186〜191頁)に明確に述べられています。
例えば、
「したがって運動量ゼロの状態を保つべく
超電子がいっせいに同じ速度をもって流れ出すというのが運動量秩序の考えである」(140頁より)とあり、
「これに対しクーパー対のもつ運動量2Qは平均運動量ではなく、
すべての対が共通してもつ運動量である」(189頁より)とあります。


『超伝導』 (岩波新書)
中嶋 貞雄 (著)
新書: 205ページ
出版社: 岩波書店 (1988/01)
ISBN-10: 4004300096
ISBN-13: 978-4004300090
発売日: 1988/01

数式を用いない定性的説明がなされています。
超伝導に関する理解を確認するために読みました。
運動量秩序がVIII章「BCS理論」の「ペアの凝縮と超伝導」の項(142〜143頁)と
「永久電流と寿命」(143〜144頁)の項に明確に述べられています。
例えば、「クーパーペアが同一の運動量でそろった運動をすることによって
マクロな永久電流が流れる」(143頁より)
とあります。


『超伝導の謎を解く (図解でウンチク)』 (単行本)
芝浦工業大学教授
村上 雅人 (著)

単行本: 183ページ
出版社: シーアンドアール研究所 (2007/06)
ISBN-10: 4903111547
ISBN-13: 978-4903111544
発売日: 2007/06

高周波超伝導電磁エンジンが不可欠の構成要素とする
超伝導磁石について分かりやすく十分な説明がなされています。
しかし、注意すべきことがあります。
電子対が同じエネルギーに凝縮されることまでは述べられていますが、
それが同じ運動量を持つことによるものであること、運動量秩序について説明が全くありません。
電気抵抗が消失するメカニズムを対を構成する電子のエネルギーのやりとりのみによって説明しています。


『やさしい超伝導のおはなし』
芝浦工業大学教授
村上 雅人 (著)
http://moniko.s26.xrea.com/cyoudendou_kiso.htm

電気抵抗と超伝導機構について非常に分かりやすい説明がなされています。




参考文献のお求めはこちらからどうぞ。




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