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補足説明

久保田英文著


目次

1.運動量秩序の基点
2.超伝導電磁エンジンの基本的機能について補足
3.超伝導電磁エンジンのエネルギーについて補足
4.衛星の打ち上げについて補足
5.実験について補足




1.運動量秩序の基点
ボース・アインシュタイン凝縮(BEC)について

「超流動とは、液体の粘性がなくなった状態のことです。」
「BECになるとなぜ超流動になるのでしょうか? 粘性は、液体中ではたらく摩擦によって生じます。液体の中で速い速度で動く部分と、遅い速度で動く部分があったとします。液体中で両者が接していると、両者がすりあってそこに摩擦が生じます。速い部分は遅い部分に引きづられて遅くなりますし、逆に遅い部分は速い部分に引っ張られて多少速くなるでしょう。このとき、両者のエネルギーの総和は、一定はなく、摩擦によって減少します。失われたエネルギーは、普通、熱となって逃げてゆきます。こうした過程が液体中のあちらこちらで起こり、これが全体に広がってゆくと、最終的には液体全体は静止してしまいます。摩擦が生じるためには、速い部分と遅い部分が接していることが必要で、両者が同じ速度で運動していたら、すりあいは起こらず、摩擦は生じません。BECが起こるということは、全粒子を同一のエネルギー最低状態に詰め込むことを意味します。それは、液体中の粒子の運動状態を均一化することになるので、上で述べた摩擦、粘性が生じないようにします。前節の表現を借りれば、系全体が巨大な波動として一丸となって振る舞います。これが、BECにより超流動が起こる理田です。」
(大阪市立大学素励起物理学研究室坪田誠教授著「ボース・アインシュタイン凝縮とは何か」10頁より)
ボース・アインシュタイン凝縮に不案内な方は、この「ボース・アインシュタイン凝縮とは何か」を参考にしてください。丁寧で正確な記述がなされています。

図 ある瞬間のクーパー対の運動量


超伝導状態においては、電子と電子の間に引力が働いて、電子対を構成しています。この電子対をクーパー対と呼びます。電子間の引力は、BCS理論(J.Bardeen, L.N.Cooper, J.R.Schrieffer )により、説明されます。クーパー対を構成する各電子は互いに反平行の運動をしています。このクーパー対の重心運動が永久電流の実体です。クーパー対がボース・アインシュタイン凝縮している状態とみなせるのが、超伝導です。

2.超伝導電磁エンジンの基本的機能について補足
「分りやすい超伝導電磁エンジン」の第1章の図2について

図2の運動量秩序の打ち消しでは、上下二方向の反発力のうちの半分が打ち消されています。すなわち下方向の反発力だけが打ち消されていることを示しています。そして、下方向の反発力は超伝導磁石に生じたものです。下方向の反発力が打ち消されたので、上方向の反発力だけが残ります。残った上方向の反発力だけが、装置に働くことになります。そして、二つの磁石は固定されているので、一つの物体とみなせます。一つの物体に一方向の力だけが働くので、一つの物体は力の方向に動きます。結果、二つの磁石が一方向に運動します。超伝導電磁エンジンは、この二つの磁石の一方向に運動する力を宇宙機に伝えて推進力とするものです。

3.超伝導電磁エンジンのエネルギーについて補足
「分かりやすい超伝導電磁エンジン」の第1章の図2に対し、磁石と磁石の間には反発力が発生するが、磁石と磁石の反発力は小さいので、宇宙機の推進力としては不十分なのではないかという疑問について

まず、超伝導磁石は低消費電力にもかかわらず、広くて強い磁場を維持しているので、大変なエネルギーを持っていると理解してください。そして、もう一つの常伝導磁石には、何万アンペア以上もの強力な電流を流せます。この強力な電流の作る磁場と、超伝導磁石の作る磁場が、磁石の一周の長さにわたって相互作用して反発力を生み出すので、極めて強い反発力を生じさせることができるのです。超伝導電磁エンジンは、この反発力(あるいは吸引力)を宇宙機の推進力として利用するのです。
反発力の強さF(ニュートン)は
F=B×I×L
により計算できます。
Bは超伝導磁石の磁場の強さ、単位はテスラ。
Iは常伝導磁石を流れる電流の強さ、単位はアンペアです。
Lは磁石の一周の長さ(超伝導磁石と常伝導磁石で共通)、単位はメートルです。
仮に、Bが5テスラ。Lが1メートルとします。
すると
F=5I
となります。
ですから、数万アンペアならば、数万の5倍ニュートンの力が働きます。ちなみに、1万ニュートンの力は、約1トンの力に相当します。
「分かりやすい超伝導電磁エンジン」7章の具体的計算例では、Bが5テスラ、Iが約1.5万アンペア、Lが1.6メートルとして、超伝導電磁エンジン一台当たり、12トン程度の推進力を導き出しています。また、この計算例は、コンパクトな飛翔体を建造可能にするための数字であり、サイズの大きなものにすれば、莫大な推力を得ることもできます。

4.衛星の打ち上げについて補足
現行の2トン級衛星打上げを考えた場合、3.の数万アンペアの供給方法をどのように考えるかについて。
私は、衛星の打ち上げについて、超伝導電磁エンジンを衛星に装備して、その超伝導電磁エンジンの力で、衛星を打ち上げることは想定していません。新型有人宇宙船の貨物として打ち上げるか、次のような方法で打ち上げることを想定しています。

衛星を載せられる丈夫な台もしくは箱を作ります。台もしくは箱の下面に数機の電磁エンジンを全体のバランスを保てるように配置します。電磁エンジンの推進力が天地方向に働くように、電磁エンジンを台もしくは箱の骨格に固定します。電磁エンジンは浮力を得るためと、機体の安定のためと、上昇・下降する力を得るために用います。この台もしくは箱に人工衛星を載せて、宇宙の衛星軌道にまで上昇させ、人工衛星を切り離し、台もしくは箱だけが下降して地球に戻ってきます。再利用型ロケットと同じ機能を簡単に実現できます。(「分かりやすい超伝導電磁エンジン」より)

この再利用型ロケットの機能を持つ装置は、「分かりやすい超伝導電磁エンジン」の第9章で計算例とともに述べている「UFOのような飛翔体」の下面の三台の超伝導電磁エンジンだけを残して、他の超伝導電磁エンジンと再利用型ロケットとして機能するのに不要な機能を取り外したものとご理解ください。
そして、数トンの力というのは、重力下で、重力を打ち消して飛行するのに必要なものです。宇宙空間を飛行するには、もっと小さな力で済みます。衛星に超伝導電磁エンジンを装備するとすれば、衛星の打ち上げではなく、無重力の宇宙空間を飛行するためです。数万アンペアの電流は、宇宙空間では必要ありません。従って、この点から超伝導電磁エンジンの電源は小さいもので済みます。衛星の打ち上げについて、超伝導電磁エンジンを衛星に装備して、その超伝導電磁エンジンの力で、衛星を打ち上げることがあまり効率がよくないことは認めます。
それから、仮に数万アンペアの電流を流すとしても、電流を流す常伝導体の電気抵抗は極めて小さなものです。電気抵抗が小さいのは、常伝導体には、断面積の大きい金属を用いるからです。電気抵抗が小さいので、「電流」×「電気抵抗」により計算される電圧も小さいものとなります。消費電力は「電圧」×「電流」により、計算されます。電流が大きくても電圧が小さければ、消費電力は比較的小さいものとなります。超伝導電磁エンジンはその構造上、低電圧なので、消費電力は小さいものとなります。消費電力が小さいので、電源も重量が小さいもので済みます。こうした原理的関係によっても、超伝導電磁エンジンは機能します。
なお、「分かりやすい超伝導電磁エンジン」の第9章に、超伝導電磁エンジンが具体的に機能することを明らかにする計算例が書いてあります。ここで説明されている飛翔体は、宇宙船と同じように人間と装置を保護できるようにするとともに、宇宙空間の航法装置を装備すれば、直ちに宇宙に行くことができ、宇宙旅行にも使用できます。

5.実験について補足
2.の基本的機能を実験室レベルで実証できるかについて。

「運動量秩序の研究」の第2章に書いてある実験方法で、証明できます。通常では、あり得ないはずの重量の異常が観測されるはずです。これを私は「原理確認の実験」と申し上げています。










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