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第三章 銀河旅行 Click Here!


図4 相対論による宇宙船の速度と質量 図5 相対論による宇宙船の速度と時間


図6 宇宙船の経過時間と速度 図7 距離計算のための分割図


 宇宙空間で長時間の大きな一定推力の飛行を可能とする全く新しいエンジンが存在するとする。恒星間旅行に十分なスペースと、強度を確保するため、荷物なども含めて総重量、M=1万トンの恒星船を建造するとする。推力を徐々に増加した後、一定推力を保つなら、加速度の人体への影響は余り無いので、宇宙船は余裕を持って30gまでの推力を出し得るとする。
 以下の計算の前提として、1年の秒数をSとし、距離である光年とメートルの間の関係を示す。1光年は1cで1年進んだ距離なので、【30】となる。








  【30】



 この宇宙船の負世界突入に要する時間を求める。力積=力×時間なので、時間は力積を力で割って求められる。この場合、力積はπMc/2、力はM×30gである。従って、求める時間は【31】のように計算され、約0.0508年となる。
 30gの加速度で、光速度cに達する時間を求める。速度=加速度×時間なので、時間は速度を加速度で割って求められる。この場合、速度はc、加速度は30gである。従って、求める時間は約0.03236年となる。
 これは負世界突入の時間よりも早い。宇宙船は0.03236年で速度cに達した後、力積が負世界突入に必要な値となる0.0508年まで、速度1cで足踏み状態にあり、πMc/2の力積を得た直後に負世界に突入すると考える。同様に負世界から正世界に帰還するときにも、負世界においてこの足踏み状態が生じると考えられる。




【31】


【32】


 質量1万トンであり、30gの推力を余裕を持って出しうる宇宙船が、地球から別の星系へ行くものとする。速度を0からkcまで加速し、kcに達すると直ちに減速に入り、速度をkcから0まで減速する。速度が0からkcに達するまでは30gの加速度で加速し、速度がkcから0に達するまでは30gで減速する。
 以上を前提に、この宇宙船の時間と速度の関係を図示すると、図6のようになり、左右対称の山が描かれる。

 この時に到達できる距離と必要な時間を求める。距離は速度×時間なので、図6の山の面積を計算することになる。そこで計算の便宜のため、図6の山を図7のように(a)〜(f)の6つの部分に分割する。(b)と(e)が速度1cの足踏み状態である。
 まず、必要な時間を求める。
 (a)と(c)の時間を求める。同じ30gの加速なので、合わせて1つの三角形として扱える。速度kcを加速度30gで割って時間を求めると、【33】となる。ここで、【32】式のc/30gS の値を代入すると、【34】のように0.03236kとなる。
 (b)の時間を求める。(b)の時間は速度が1cに達してから負世界に突入するまでの時間だから、【31】の時間から【32】の時間を引いて、【35】となる。
 速度が0からkcに達するまでの時間は【34】と【35】を足して、【36】となる。(a)(b)(c)と(d)(e)(f)は対称なので、地球からこの星系へ行くのに必要な時間は【36】の二倍の【37】となる。

【33】 【34】


【35】
【36】

【37】


 次に何光年先の星系に達するのか、図6の山の面積から距離を求める。
 (a)と(c)を合わせた面積を求める。同じ30gの加速なので、合わせて1つの三角形として扱える。(a)と(c)を合わせた時間は【34】より、0.03236k(年)となる。達する速度はkcである。三角形(a)+(c)の面積は【41】となる。
 長方形(b)の面積を求める。時間は【35】より、0.01844年であり、速度1cで飛行するのだから、【42】となる。
 図6の山は左右対称だから、全体の面積は(a)+(c)の面積【41】と(b)の面積【42】を合わせて2倍したものとなる。結局、別の星系までの距離は【43】となる。

【41】

【42】


【43】


 地球から4.3光年であり最も近い恒星系にあるアルファ・ケンタウリへ行くのに必要な時間を求める。
 【45】を解くと【46】となる。

【45】

【46】

【47】

 【46】を【37】式に代入して、【47】のように、片道が約0.78年となる。
宇宙船時間で二年内に地球からアルファ・ケンタウリを往復できることになる。
 また、図5のように地球時間では、【3】により負世界での超光速飛行中にウラシマ効果の逆が生じ、これよりも短い時間となると考えられる。
 そして、【2】によれば、図4のように負世界での超光速飛行中には質量が減少するが、その影響は無視した。
 一定の力積を与えうる新しいエンジンにより、いわゆる超光速飛行が可能となることを示した。この可能性を示す方向で理論構築した点、心配が残る。πmc/2で負世界に突入することは確実だと考えているが、負世界から確実に帰還できるのかと。しかし、私は、負世界への突入よりも負世界からの帰還の方が簡単であると考えている。すなわち、減速することで帰還できると考えている。引力の働く世界から斥力の働く世界へ突入するよりも、斥力の働く世界から引力の働く世界へ帰還する方が容易だと考えられるからである。今後、負世界についての議論が進み、負世界からの帰還が容易であることが理論的に確実となったとき、宇宙大航海時代の扉が開かれることを祈る。


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