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諸世界の理論


久保田英文著
初めに
 私は、「星の海への道」(1)で、次のことを示しました。物質が実数の根拠であり、反重力物質が虚数の根拠となること。反重力物質が負世界という私たちの世界とは別の世界を形成したこと。質量mの物質にπmc/2の力積(2)を与えれば、負世界に突入すること。これらが、負世界と虚数に関する私の理論です。そして、私は、M理論、超ひも理論、超対称性理論、ビッグバン理論を支持します。私の理論に、これらの理論の成果を加えて、全体的な宇宙像を構築します。


反重力物質の性質
 まず、反重力物質の性質を明確にします。物質に対して斥力の働く反重力物質が現在の物理理論で述べられているとすれば、何に該当するのでしょうか。候補としては、二つ、上げられます。一つは、陽電子などの反粒子(反物質)。もう一つは、超対称性理論の予言する超対称性粒子です。反物質から検討します。反物質は物質と対消滅します。これは、反重力物質と物質が斥力を及ぼしあい、相容れないことに整合しません。また、反物質は比較的よく研究されていますが、物質と斥力を及ぼしあうという報告はないようです。これに対して、超対称性粒子は、自然界で見つかっておらず、その性質は未解明です。そして、私の考える反重力物質は、物質に対して、反物質よりも深い対称的関係にあります。物質の質量という根本的性質に対して、斥力を及ぼすという対称的関係にあります。おそらく、超対称性粒子が反重力物質だと考えられます。そして、超対称性粒子が反重力物質だと考えれば、私の反重力物質と負世界の理論がM理論などと整合的に結びつきます。
 次に、斥力の性質を述べます。反重力と物質間の斥力は、おそらく、万有引力と同様に距離の逆二乗に比例すると考えられます。そして、反重力物質と反重力物質の間には、引力が働きます。これにより、反重力物質の世界、負世界の創造が可能になります。


私たちの宇宙の歴史
 以上の性質を持つ反重力物質が存在するとして、私たちの宇宙の歴史を述べます。ビッグバンにより、相互に対称的な物質と反重力物質が、おそらく同じ量だけ、生まれました。物質と対称的に創造されたのは、反物質ではなく、反重力物質だとと考えます。これにより、対消滅による宇宙の消滅を心配する必要がなくなります。物質と反重力物質は、生まれたとき、極小空間内にありました。物質、反重力物質間の距離はごく小さいものでしたので、働く斥力の力は極めて大きかったと考えられます。この大きな斥力により、インフレーションが起こりました。そして、物質と斥力を及ぼしあう、すなわち物質と相容れない反重力物質は、物質とは別の世界、負世界を形成して、そこに入りました。このため、私たちの世界では、反重力物質、すなわち超対称性粒子を発見できないのです。超対称性粒子は、負世界にあるのです。
 しかし、斥力も、引力と同様、世界を超えて漏れ出ると考えられます。負世界の反重力物質と正世界の物質は、今も斥力を及ぼしあっています。この斥力を受けて、私たちの宇宙は加速して膨張していると考えられます。そして、現在、宇宙膨張の原因として、ダークマターの反重力が考えられています。私の立場では、ダークマターは、負世界の反重力物質であって、別世界から、斥力、すなわち反重力を正世界に及ぼしていることになります。
 この斥力は距離が増大すると、小さくなります。現在、宇宙(正世界)は加速しながら、膨張していると観測されています。この膨張に連れて、斥力は弱くなると考えられます。従って、加速度は低下の傾向にあるはずです。ですが、対称的な負世界も膨張していると考えられます。このため、同じ方向に加速している物質と反重力物質の距離は変わらず、その間の斥力も変わらないということが考えられます。これにより、加速度の低下傾向が部分的に打ち消されていることが考えられます。
 この後、私たちの宇宙が永遠に膨張するのか、停止するのか、それとも収縮に転じるのか、正確に示す能力は、私にはありません。しかし、収縮に転じても、おそらくビッグクランチはないのではないかと考えます。収縮すれば、距離が小さくなって斥力が大きくなるからです。


11次元宇宙の構造
 以上のように、私たちの宇宙には正世界と負世界があります。この正世界と負世界が、全宇宙でしょうか。M理論と超ひも理論に則って考えてみます。超ひも理論は、10次元の世界を要求します。そして、超ひも理論に根拠を与えるM理論は、10次元を包括する11次元の世界を要求します。それに、M理論は次元のコンパクト化を要求しません。私は、超ひも理論に加えて、M理論を支持しますので、私たちの宇宙は11次元ということになります。そして、M理論によれば、「われわれの宇宙全体を、もっと大きな宇宙に浮かんでいる膜と見る」(261頁)ことになります。
『パラレルワールド』(3)では、宇宙が五次元世界に浮かぶ三次元の膜だと提案しています(263頁)。私はこの考えに賛成します。この五次元世界を母世界と呼ぶことにします。この立場に立って、11次元の世界を考えて見ます。私の考えでは、次のようになります。

1.世界次元
2.時間次元
3.空間次元(母世界のX次元)
4.空間次元(母世界のY次元)
5.空間次元(母世界のZ次元)
6.空間次元(正世界のX次元)
7.空間次元(正世界のY次元)
8.空間次元(正世界のZ次元)
9.空間次元(負世界のX次元)
10.空間次元(負世界のY次元)
11.空間次元(負世界のZ次元)

私たちの宇宙には、正世界と負世界があります。母世界に、正世界の三次元の膜と負世界の三次元の膜が浮かんでいることになります。この三次元の膜内の空間座標を示すのが、6.〜11.の空間次元です。母世界内の空間座標を示すのが3.〜5.の空間次元です。時間は、母世界の時間を正世界と負世界が共有し、2.の一つの時間次元となります。1.の世界次元は、母世界か、正世界か、負世界か、どの世界の空間座標かを指定するものです。足し合わせるとちょうど11次元となります。これが、私たちの宇宙の全体と考えます。


n次元宇宙
 ですが、母世界には、正世界と負世界の他にも膜が浮かんでいる可能性が否定できません。母世界は、私たちの宇宙の他にも、別の宇宙を有している可能性を否定する根拠は何もありません。否定する根拠が無い以上、別の宇宙が存在すると推量するのが妥当でしょう。しかし、その宇宙は量子論的宇宙ではないと考えます。私たちの別の選択の可能性が現実化したものではないと考えます。私たちの決断により、私たちの宇宙は一つの方向に向かうと考えるからです。波動関数は、私たちの宇宙の空間内での存在確率を示すものと考えます。ただし、波動関数の虚数項は、負世界での存在確率を示すのではないかと考えられます。
 従って、全宇宙を考えるとき、1.の世界次元は多数を示し、11次元をはるかに超える次元が存在する可能性があります。全宇宙は、n次元宇宙だと考えられます。



謝辞

『パラレルワールド』を書かれたミチオ・カク氏と現代物理理論を構築された方々、特に『パラレルワールド』でミチオ・カク氏が謝辞を寄せられた方々に対して、感謝の念を表明します。



参考文献とノート

(1)  久保田英文著『星の海への道』 http://j.se-engine.org/res/p5t1r1.html

(2)  "c" は光速度です。

(3)  ミチオ・カク著『パラレルワールド─11次元の宇宙から超空間へ』(斉藤隆央訳/日本放送出版協会刊)



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