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エネルギー循環論
─ディラックの海とエネルギーと質量─


久保田英文著
超弦理論、M理論1、ビッグバン理論、そして私の負世界2と母世界3の理論に基づいて、仮説を提示します。その仮説とは、ディラックの海の実在とエネルギーの循環と重力場の実体を示します。

 エネルギー保存則には次の二点の問題が存在します。一つ目は、裸の電荷のエネルギーが無限大である点。繰り込み理論によって無限大を数学的に処理することはできますが、無限大のエネルギーがなぜ存在するのか説明する必要があります。二つ目は、捨てられた熱エネルギーが最終的にどこへ行くのかということ。エネルギーが不滅なら、捨てられた熱エネルギーも行く先があるはずであり、その行く先を説明する必要があります。
 私は、超伝導磁石のエネルギーについて研究するうちに、これらの疑問を持つようになりました。考えた末、エネルギー循環論という仮説を立てました。この仮説により、上の二点を説明できるとともに、重力場に関する仮説も導かれます。私は、これらの仮説が合理的であり正しいと信じていますが、これらの仮説の全体を詳細に渡って説明する能力はありません。しかし、これらの仮説の方向に研究を導いて、科学の発展に貢献したいと思います。

 二つの問題を解決するためには、ディラックの海( Dirac sea ) の実在を認める必要があります。ディラックの海では、「負のエネルギーと負の電荷を持った電子が時間を逆行する」ことになります。これは、ファインマン(RP・Feynman)とシュトゥッケルバーグ(ECG・Stueckelberg)の解釈によれば、「正のエネルギーと正の電荷を持った電子が時間を順行する」に等しいとされます。この解釈により、ディラックの海には、正のエネルギーが満ち溢れていることになります。
 海がエネルギーで満ち溢れているので、無限のエネルギーが存在すると言えます。このディラックの海にある正のエネルギーを私たちの正世界に電場の形で導きいれる働きをするのが負の電荷だと考えられます。これが、マックスウェル方程式の発散(divD=ρ)の意味です。電場のエネルギーは、ディラックの海のエネルギーが源です。そして、ディラックの海のエネルギーが無限だから、電荷のエネルギーも無限大となるのです。
 また、電場の形のエネルギーをディラックの海に戻し入れる役割を働きをするのが正の電荷だということになります。
さらに、捨てられた熱エネルギーの行き先がディラックの海だと考えられます。

 しかし、ディラックの海の実在に対しては、二点の大きな疑問があります。一つ目は、ディラックの海の無限の電子の無限の質量が時空をねじ曲げるのではないかということ。二つ目は、正世界の電子と、ディラックの海の無数の電子との相互作用が生じるのではないかということ。すなわち、無数の電子の持つ無限大の負の電荷は何が打ち消しているのかということ。
 一つ目は、ディラックの海が「母世界」3に存在するということで解決可能です。私たちの住む正世界は、5次元の母世界に浮かぶ3次元の膜1と考えられます。正世界の膜は、ヒッグス粒子を含む素粒子から成り立っています。ですから、母世界にヒッグス粒子は存在しないと考えられます。母世界では、ヒッグス粒子が存在しないので、素粒子には質量は存在しません。ですから、ディラックの海の電子にも質量は存在しないことになります。
 二つ目は、ディラックの海に実在するのは、「時間を逆行する負のエネルギーと負の電荷を持った電子」と「時間を順行する正のエネルギーと正の電荷を持った電子」がほぼ同数だと考えることになります。この電子と陽電子は、負のエネルギーと正のエネルギー、時間の逆行と順行という違った性質を持つと同時に意味的に等しい存在なので、通常の物質と反物質のように対消滅することはないと考えられます。従って、負の電荷を持った電子と正の電荷を持った電子がほぼ同数存在し、電気的に中性になります。そして、負の電荷を持った電子と正の電荷を持った電子が均一に散在していれば、局所的にも負の電荷を持った電子と正の電荷を持った電子が電気的に打ち消しあいます。そして、世界間の壁もあって、正世界の電子との相互作用はほとんど考える必要がなくなると考えます。

 ディラックの海の電子に質量は存在しないことから、重力に関する次の仮説が導かれます。質量ゼロの電子の海が、重力場の役割を果たしているのではないかと考えられるのです。局所的にも負の電荷を持った電子と正の電荷を持った電子が電気的に打ち消しあっているとすれば、正と負の電子がペアを組んで重力子として働いているとも考えられます。

 以上の仮説を元に、ビックバンの過程を見ると、まず、第一の相転移で、ディラックの海(母世界)と我々の正負の世界が分離します。次に、物質と反重力物質(s粒子)との間に働く斥力のインフレーションにより、正世界と負世界2が分かたれることになります。

 これらの仮説の理論による検証が行われてより全体的で深化した理論となり、実験による検証も行われることを望みます。


謝辞
 物理理論の発展に寄与した科学者に感謝します。


参考文献
1.ミチオ・カク著『パラレルワールド─11次元の宇宙から超空間へ』(斉藤隆央訳/日本放送出版協会刊)
2.久保田英文著『星の海への道』 http://j.se-engine.org/res/p5t1r1.html
3.久保田英文著『諸世界の理論』 http://j.se-engine.org/res/p5t1s1.html



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