第7章 電磁エンジンの推進力の大きさと電力 F=BILですから、電磁エンジン一台の推進力の大きさを増大させるには、 1.超伝導磁石の磁場の強さを大きくする。 2.脈流の強さを大きくする。 3.超伝導磁石と常伝導磁石のループの大きさを大きくする。 の三つの方法があります。 もちろん、電磁エンジンを数台組み合わせて用いることにより、全体としての推進力を増加させることができます。このうち「1.超伝導磁石の磁場の強さ」の強化は、消費電力を上げずに電磁力を強化することができますが、それには限界があります。また、「3.超伝導磁石と常伝導磁石のループの大きさを大きくする」と、重量とサイズが大きくなりすぎる危険があります。最も、効果的なのは「2.脈流の強さを大きくする」ことだと考えられます。そして、脈流の強さをコントロールすることで推進力の大きさをコントロールもできます。「運動量秩序の研究」では、控えた数字を使っていますが、推進力を非常に大きなものにすることもできます。 脈流の強さは数万アンペア以上にも強化できます。しかし、消費電力が大きくなります。そこで、私は脈流を流す常伝導磁石の断面積を大きくして電気抵抗を少なくすることを考えました。しかし、今度は断面積を大きくしたことで装置の重量が重くなります。しかし、電流を大きくしたことによる電磁力の強さの増大が、この場合の装置の重量の増大を十分に上回らせることができると考えます。ただ、ある程度の消費電力は必要でしょう。 具体的計算例 ☆ 常伝導磁石について 超伝導磁石の与える磁場が5テスラ。 常伝導磁石の常伝導体には鉄を使用します。 常伝導磁石の一回りの長さが1.6メートル。 常伝導体の断面積を0.02平方メートル。 常伝導体に流す脈流の最大強度を4.8万アンペア。 鉄(鋼鉄)の抵抗率を20×10−8オーム・メートル。 鉄の密度を7.87×103キログラム/メートル3。 以上を前提にして計算します。 脈流の電力計算に使用する実効値を求めます。 交流の実効値は交流の最大電流の値に1/√2をかけたものです。脈流は断続的に流れますが、整流する前には交流が必要なので、このままの実効値を用います。 4.8万×1/√2≒3.395万アンペア 脈流による電磁力の強さの計算には平均値を用います。平均的な電磁力の値が実効的な推進力の値となるからです。 交流の平均値は交流の最大電流の値に2/πをかけたものです。加えて脈流は断続的に流れるので、それを2で割ります。 4.8万×2/π÷2≒1.528万アンペア 常伝導体の電気抵抗は「抵抗率×長さ÷断面積」で計算されますので、 この常伝導体の電気抵抗は、 20×10−8×1.6÷0.02=1.6×10−5オーム 電力は「電流2×抵抗」で計算されるので、 常伝導体の重さは、 7.87×103×0.02×1.6=251.84キログラム ☆配線に使用する銅製ケーブルについて。 銅製ケーブルの長さを1メートル。 脈流電源もしくは変圧器を常伝導体の近くにもってくることでこの値となります。 銅製ケーブルの断面積は0.012平方メートル。 銅の抵抗率を2×10−8オーム・メートル。 銅の密度を8.96×103キログラム/メートル3 以上を前提として計算します。 2×10−8×1÷0.012=1/6×10−5オーム この場合の銅製ケーブルの最大消費電力は電流の実効値を用いて、 (3.395×104)2×1/6×10−5≒1921ワット ちなみに電圧は「電流×抵抗」で計算されるので、 3.395×104×1/6×10−5≒0.056584ボルト 銅製ケーブルの重さは 8.96×103×0.012×1=107.52キログラム 常伝導体と銅線の消費電力の合計は 18442+1921=20363ワット この約20.4キロワットに時間をかけたものが電流を最強にしたときに必要な電力量となります。 この電力量を賄える電源が必要となります。 常伝導体と銅線の重量の合計は 251.84+107.52=359.36キログラム ☆脈流が受ける力について計算します。 F=BILの式に従い計算します。 実効的な力の強さを求めるので、脈流の強さは平均値を使用します。 5×1.528×104×1.6=122240ニュートン 122240÷9.8≒12473.4キログラム すなわち、12.47トン程度の力。 12470−359.36=12110.64キログラム、すなわち12.1トン程度の余裕があります。
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