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超伝導電磁推進船ヤマト1との関係
                          久保田英文著
"YAMATO1" of Kobe Maritime Museum in Kobe, Hyogo, Japan   663highland GFDL+creative commons2.5   From Wikimedia project

 超伝導電磁推進船という考えがあります。それは、船から電流を流した水に、船に据え付けられた超伝導磁石で磁場を掛けて、水にフレミング左手の法則に基づく電磁力を生じさせて水を押し出して進むものです。しかし、実は、磁力の打ち消しの方法は異なりますが、超伝導電磁エンジンと同じ方法で推進力を得ています。
 超伝導電磁推進船と超伝導電磁エンジンの仕組みを見てみましょう。

図1 超伝導電磁推進船の電流ループ 図2 超伝導電磁エンジンの電流ループ
図1は、『超伝導による電磁推進の科学』(岩田章・佐治吉郎著/朝倉書店刊)を参考にして作成しました。この図に見られるように、超伝導電磁推進船も超伝導電流ループと常伝導電流ループを有し、それらは船体に固定されています。超伝導電流ループと常伝導電流ループの間には、作用・反作用の法則が直接的に成り立ちます。そのことは、『超伝導による電磁推進の科学』において、「電流ループ間の電磁力は作用・反作用の法則が直接的に成り立つ。」(26頁)と明確に述べられ、25〜26頁でその理由が理論的に明確に論述されています。そして、超伝導電流ループと常伝導電流ループの間の作用を利用します。すなわち、ループ間の一方の磁力を打ち消し、他方を推進力として利用します。
 磁力の打ち消しの方法は、次のようなものです。常伝導ループの一部が欠けていて、海水に通電するようになっています。海水に通電されている部分に働く電磁力は海に働くのであり、船体のどこにも働いてはいません。すなわち、海水に通電されている部分に働く電磁力は海水とともに流されることになります。その分だけ、船体に働く電磁力は少なくなります。ということは、常伝導ループに働く磁力の一部が打ち消されたことになります。すると、打ち消された分だけ、超伝導ループに働く磁力の方が大きくなります。差し引き、超伝導ループが常伝導ループよりも大きい分の船体に働く磁力が推進力となるのです。ですから、私の考えでは、超伝導ループに働く磁力※が推進力として働いていることになります。
 これに対して、超伝導電磁エンジンの磁力打ち消しの方法は、超伝導ループに働く電磁力を磁力に変化させずに、超電子の反平行運動のエネルギーに転化させます。超伝導ループに磁力が生じず、常伝導ループにだけ磁力が生じるので、常伝導ループに生じる磁力を推進力として利用できます。
 ですから、磁力の打ち消しの方法は違いますが、超伝導電磁推進船と超伝導電磁エンジンは、同じ方法で推進力を得ていることになります。従って、超伝導電磁推進船の代表であるヤマト1が推進力を発揮したことは、超伝導のマクロな量子効果である磁力の不発生が起こりさえすれば、超伝導電磁エンジンが機能することの証明になっています。
以上を整理してみます。

超電導電磁推進船 超伝導電磁エンジン
(1) 打ち消しの無い場合
(2) 打ち消しの働き(縦線の右側に働く)
(3) 打ち消しの働いた結果
(4) 結果としての推進力


超伝導電磁推進船と超伝導電磁エンジンの同じ点。
1.超伝導電流ループと常伝導電流ループの間の磁力を利用する。
2.超伝導電流ループと常伝導電流ループは固定された位置関係にある。
3.一方の電流ループに働く磁力を打ち消したと同様の効果を生じさせる。

 超伝導電磁推進船と超伝導電磁エンジンの相違点。
1.打ち消したと同様の効果を生じさせるループは、超伝導電磁推進船の場合は常伝導ループであり、超伝導電磁エンジン場合は超伝導ループである。
2.打ち消したと同様の効果を生じさせる範囲は、超伝導電磁推進船が片方のループの磁力の一部であるのに対して、超伝導電磁エンジンは片方のループの磁力の全部である。
3.超伝導電流ループと常伝導電流ループの間の配置関係は、超伝導電磁推進船がルーズであるのに対して、超伝導電磁エンジンは重ね合わせるように固定されて密接である。
4.打ち消したと同様の効果を生じさせる方法は、超伝導電磁推進船が水への通電であるのに対して、超伝導電磁エンジンは超伝導のマクロな量子効果である。

 相違点の2.3.4.から、超伝導電磁推進船の非効率な理由が導かれます。すなわち、磁力の一部しか利用していないし、ループ間の配置関係がルーズなので、推進力が大きくならないのです。また、超伝導電磁推進船は、水に通電するので、水面か水中でしか使用できません。しかも、超伝導電磁推進船には、電気分解によるガスの発生や水流・摩擦など、水を利用することによる問題も生じます。これに対して、超伝導電磁エンジンにはそのような問題や制限は無く、浮力となる反重力の性質を持つ推進力をも得ることができます。

※以前は、「常伝導ループに働く磁力」としてきましたが、「超伝導ループに働く磁力」に訂正します。


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