第9章 電磁エンジンの産業上の利用可能性(「UFOのような飛翔体」を含む)
あらゆる乗り物を高性能化できます。 ロケットエンジンとの比較 ロケットエンジンの原理は、エンジンの中で高圧の燃焼ガスを大量に作り、それを後方に高速で噴射することにより、前に進む力を得るものです。ロケットエンジンは、燃焼ガスの素となる燃料を大量に必要とします。その大量の燃料を一緒に運ぶと同時に、時間当たり大量に消費するので、航続距離が短くなります。エンジン内で燃焼させるので危険を伴います。燃焼ガスを噴射させるのでその推進力の大きさにはある程度の限界があります。 これに対して電磁エンジンは電源を必要としますが、電磁エンジン自体には燃料を必要とせず、危険もありません。極めて大きい推進力を比較的小さい消費電力により、安定的かつ長期間得ることができます。推力の限界はロケットエンジンよりも遥かに大きい値になります。電気エネルギーを直接運動エネルギーに効率的に変換しているからです。 具体的利用例1 「UFOのような飛翔体」(宇宙旅行に使う宇宙船にすることもできます。) タイプ1 流線型 流線型の図全体の説明 楕円で描いたものが船体です。 正方形が電磁エンジンです。1から5の番号をつけてあります。 正方形の中の点線が常伝導磁石と超伝導磁石の境目です。 矢印は電磁エンジンの推進力です。 流線型の具体的構造 図18 下面 下面に、三つの電磁エンジンを二等辺三角形に配置します。電磁エンジンの推進力が天地方向に働くように、電磁エンジンを飛翔体の骨格に固定します。浮力を得るためと、機体の安定のためと、上昇・下降する力を得るためです。機体をどんな気象条件でも安定させるためには少なくとも、この用途の電磁エンジンが三つ必要と考えます。前方には1台、後方に2台配置します。前方にコックピットを配置し、後方に重い発電機などを配置するからです。 図19上面 この図には、飛翔体を直進させる場合の推進力を記入してあります。 上面に、電磁エンジンの推進力が水平方向に働くように、電磁エンジンを左右2台、飛翔体の骨格に固定します。前進と後退と方向転換に用います。前進と後退には左右二つの電磁エンジンに同じ大きさの推進力を同じ方向に発生させます。方向転換には、左右2台の電磁エンジンの推進力の大きさを異なるようにする方法と、左右2台の電磁エンジンによる推進力の方向を異なるようにする方法を組み合わせて行います。 制動には5台の電磁エンジンを使用します。脈流の方向を逆転させて推進力を逆転することにより行います。電磁エンジンの推力をゼロにするエンジンブレーキは原則として働きません。空中を飛行し、空気抵抗しか働かないからです。しかし、上昇に対してのみは、エンジンブレーキが可能です。重力を利用できるからです。 図20 左側面 この図には浮力を得ながら、飛翔体を前進させる場合の電磁エンジンの推進力を記入してあります。 図21 右側面 流線型の具体的計算例 前章の具体的計算例で用いた電磁エンジンを使用するものとします。 浮上用に三機を装備しているので、この飛翔体には、 12.47×3=37.41トンの浮力が働きえます。 このうち4.41トンを、上昇・下降する推進力として残しますと、残った33トンを重力の打ち消しに使えますので、この飛翔体の全重量は33トンとなります。 そして、常伝導体と銅線の重量を除いてみます。 33000−5×359.36=31203.2キログラム 31.2トン程度の余裕が残ります。 機体全体の重量を33トンとして、この飛翔体の加速性能を計算してみます。 まず、4と5の電磁エンジンを用いて水平に前進する際の最大加速度です。 合計の最大推進力は 12.47×2=24.94トン これをニュートン単位に直すには9.8をかけます。 よって、αを加速度とすると 24.94×103×9.8=33×103×α これを解いて α≒7.40メートル/秒2 次に、1と2と3の電磁エンジンを用いて垂直に上昇する際の最大加速度です。 最大上昇力は4.41トンの力です。 4.41×103×9.8=33×103×α α≒1.30メートル/秒2 ちなみに時速100キロメートルは 100×103÷60÷60≒27.7メートル/秒 です。 この飛翔体の最大推力を出したときの消費電力量を賄える発電機の能力を求めます。 20.4×5=102キロワット 超伝導磁石の消費電力は、一台あたり8キロワットとして 8×5=40 この40キロワットに加えて、電子機器や空調などの電気機器の消費電力分なども必要となりますが、 170キロワット程度の発電機で済むと考えます。 そして、31.2トンの余裕に5台の超伝導磁石、170キロワット程度の発電機と、20.4キロワットの変圧器5台、その他の電気機器、電子機器、骨格、外皮、操縦装置などの重量が収まります。 タイプ2 円盤型 円盤型の図全体の説明 円で描いたものが船体です。 正方形が電磁エンジンです。1から6の番号をつけてあります。 正方形の中の点線が常伝導磁石と超伝導磁石の境目です。 矢印は電磁エンジンの推進力です。 円盤型の具体的構造 図22 下面 下面に、三つの電磁エンジンを正三角形に配置します。電磁エンジンの推進力が天地方向に働くように、電磁エンジンを飛翔体の骨格に固定します。浮力を得るためと、機体の安定のためと、上昇・下降する力を得るためです。機体をどんな気象条件でも安定させるためには少なくとも、この用途の電磁エンジンが三つ必要と考えます。正三角形の頂点に3台とも配置します。中心の上方にコックピットを配置し、中心の下方に重い発電機などを配置することになります。 図23上面 この図には、飛翔体を直進させる場合の推進力を記入してあります。 上面に、電磁エンジンの推進力が水平方向に働くように、電磁エンジン3台を飛翔体の骨格に固定します。その位置は正三角形の頂点です。この3台の電磁エンジンの推進力と下面の3台の電磁エンジンの上昇・下降力を組み合わせて、各方向の推進力を得ます。 制動には6台の電磁エンジンを使用します。脈流の方向を逆転させて推進力を逆転することにより行います。電磁エンジンの推力をゼロにするエンジンブレーキは原則として働きません。空中を飛行し、空気抵抗しか働かないからです。しかし、上昇に対してのみは、エンジンブレーキが可能です。重力を利用できるからです。 図24 左側面 この図には下降しながら、飛翔体を前進させる場合の電磁エンジンの推進力を記入してあります。 図25 右側面 円盤型の具体的計算例 前章の具体的計算例で用いた電磁エンジンを使用するものとします。 浮上用に三機を装備しているので、この飛翔体には、 12.47×3=37.41トンの浮力が働きえます。 このうち4.41トンを、上昇・下降する推進力として残しますと、残った33トンを重力の打ち消しに使えますので、この飛翔体の全重量は33トンとなります。 そして、常伝導体と銅線の重量を除いてみます。 33000−6×359.36=30843.84キログラム 30.8トン程度の余裕が残ります。 機体全体の重量を33トンとして、この飛翔体の加速性能を計算してみます。 まず、4と5と6の電磁エンジンを用いて水平に前進する際の最大加速度です。 12.47×3=37.41トン これが最大前進力となります。 αを加速度とすると 37.41×103×9.8=33×103×α これを解いて α≒11.10メートル/秒2 次に、1と2と3の電磁エンジンを用いて垂直に上昇する際の最大加速度です。 最大上昇力は4.41トンの力です。 4.41×103×9.8=33×103×α α≒1.30メートル/秒2 この飛翔体の最大推力を出したときの消費電力量を賄える発電機の能力を求めます。 20.4×6=122.4キロワット 超伝導磁石の消費電力は、一台あたり8キロワットとして 8×6=48 この48キロワットなどに加えて、電子機器や空調などの電気機器の消費電力分なども必要となり、 200キロワット程度の発電機が必要になります。 そして、30.8トンの余裕に6台の超伝導磁石、200キロワット程度の発電機と、20.4キロワットの変圧器6台、その他の電気機器、電子機器、骨格、外皮、操縦装置などの重量が収まります。 「UFOのような飛翔体」の課題 ・ 超伝導磁石と常伝導磁石の磁力による影響、機器への影響等を考える必要があります。 ・ 一回巻きの電磁石として使う常伝導体は、鋳鉄ではもろいし電気抵抗が大きくなるので、特注の鋼鉄を使うことになるかと考えます。 ・ 電磁エンジンを骨格に固定して力を伝えます。ですから、骨格は各所に電磁エンジンが与える力に耐えられる頑丈なものでなくてはなりません。 ・ 電磁エンジンの推進力の逆転にも耐えられるしっかりとした方法で電磁エンジンを骨格に固定しなければなりません。 ・ 常伝導体から電気が漏れないように被覆する材料は、骨組みと電磁エンジンの間において、横ズレの力や圧力が加わっても、破れない丈夫なものを使用する必要があります。 ・ 建築物と同じような構造計算が必要になると考えます。 ・ 空気力学的計算も必要になります。 ・ この飛翔体と電磁エンジンに重量と発電能力が適した電源を設置する必要があります。 ・ 超伝導磁石の冷凍には三相交流を必要とすると考えられるのに対して、脈流は単相交流を整流したものであり、単相交流が必要となります。したがって、三相交流発電機を装備するとともに、相変換トランスで三相を単相に変換することになると考えます。整流器も必要です。 ・ 変圧器を電磁エンジンの直近に設置して、銅線の消費電力を抑えるとともに、変圧器までの配電は高圧電流を用いて、電力消費と導体の重量を抑えることになります。 ・ 人間がコックピットの操縦器を操作することにより、各電磁エンジンの出力が調整されて、自由自在に運動できるようにするコンピュータープログラムの作成が必要となります。操縦器もこの飛翔体に適した操作しやすいものに改良すると良いでしょう。 ・ このコンピュータープログラムは脈流の波形に従って、推進力の強さがゼロから最大値まで変化することを考慮に入れた上で、消費電力を最小にするものでなければなりません。 ・ 飛行機の航法装置と自動車の航法装置を合わせたものが必要となるでしょう。 ・ 安全性を確保する必要があります。人間用の脱出装置が必要でしょう。飛行機と違い、翼で浮力を得るものではないので、飛翔体にパラシュートを装備すれば、機体が守れますし人間の安全も図れます。それから事故により、万一、電磁エンジンが一台しか機能しないようになっても、その一台を浮力として利用して上空から地上に安全に帰還できるようにすると良いでしょう。 ・ 発電機が故障したときのために、予備の電源を装備すると良いでしょう。 ・ 飛行中は、飛行機と同じように機内にいる人間が快適かつ安全に過ごせるようにする必要があるのは、もちろんです。 このような飛翔体は、宇宙船と同じように人間と装置を保護できるようにするとともに、宇宙空間の航法装置を装備すれば、直ちに宇宙に行くことができ、宇宙旅行にも使用できます。 具体的利用例2 飛行機の高性能化 飛行機に浮力を得るためと、上昇・下降用に電磁エンジンを装備します。上昇・下降用の電磁エンジンにより、垂直離着陸が可能になります。電磁エンジンにより浮力を機体に与えて、機体を安定させるとともに機体に働く重力を打ち消した上で、従来のジェットエンジン等で推進させれば、極めて経済的なパフォーマンスを得ることができます。 具体的利用例3 衛星の打ち上げ 衛星を載せられる丈夫な台もしくは箱を作ります。台もしくは箱の下面に数機の電磁エンジンを全体のバランスを保てるように配置します。電磁エンジンの推進力が天地方向に働くように、電磁エンジンを台もしくは箱の骨格に固定します。電磁エンジンは浮力を得るためと、機体の安定のためと、上昇・下降する力を得るために用います。この台もしくは箱に人工衛星を載せて、宇宙の衛星軌道にまで上昇させ、人工衛星を切り離し、台もしくは箱だけが下降して地球に戻ってきます。再利用型ロケットと同じ機能を簡単に実現できます。 具体的利用例4 空飛ぶ自動車 電磁エンジンを含めた機体全体の重心に、電磁エンジンを一台、配置します。この電磁エンジンにより、機体全体に働く重力の打消しと上昇・下降を行います。その他の、前方・後方への推進、機体の安定、方向転換等は、従来技術、プロペラエンジン等に任せます。これにより、完全な「空飛ぶ自動車」が容易に実現します。この「空飛ぶ自動車」は垂直離着陸ができます。高空を飛行機と同じように飛べます。地上、数十センチメートルを飛行して、車輪なしで走行できます。従来の地上車の直上を安定して飛行して追い抜いていくことができます。アメリカのモラー社がスカイカーを開発しています。このスカイカーを基にして空飛ぶ自動車を製作すれば、簡単にできます。 |