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マイスナー効果の正しい理解
 1933年にドイツのマイスナー(W. Meissner)と弟子のオクセンフェルド(R. Ochsenfeld)が超伝導体内部の磁束密度が常にゼロである現象を発見しました。この現象、マイスナー効果は超伝導体の持つ性質の一つであり、完全反磁性とも言います。
 このマイスナー効果について、永久電流の磁場が外部磁場を排除するように説明されることがあります。しかし、これは便宜的なマイスナー効果の説明方法に過ぎず、これが文字通り真実の実体だと考えるならば、それは間違いです。
 これを真実の実体だと考えるならば、次の二つのようなおかしなことが生じます。
(1)
 真実の実体として永久電流の磁場が外部磁場を排除するならば、永久電流の回りには、永久電流による磁場だけが存在することになります。すると、永久電流の回りには永久電流による磁場が残ることになります。すなわち、ゼロではない永久電流による磁束密度が永久電流の回りに存在することになり、超伝導体内部の磁束密度がゼロではなくなってしまいます。
(2)
 作用・反作用の法則に反します。永久電流の磁場が外部磁場を排除するならば、超伝導体内部には外部磁場が作用しないと考えるのが自然であるということになります。しかし、永久電流は磁場を発生させます。その永久電流の磁場は外部磁場に作用しています。外部磁場が超伝導体内部の永久電流に作用しないならば、作用・反作用の一方が作用しないことを認めることになり、それは、作用・反作用の法則に反します。

 正しい理解とは、次のようなものです。
「磁束密度Baが超電導体に印加されたとしよう。………これまで学んだように、超電導体の中の全磁束密度は零である。この完全反磁性は、金属の内側のどこでも印加磁界による磁束密度をちょうど打ち消す磁束密度BiつまりBi=−Baを作るように表面しゃへい電流が流れることに基づいている。」(「超電導入門」初版第9刷20頁最終行〜21頁8行/A.C.ローズ-インネス、E.H.ロディリック著島本 進、安河内昂訳/産業図書株式会社刊)
 マイスナー効果による超伝導体内部の磁場の打ち消し(完全反磁性)は、存在する外部磁場の磁束密度に、存在する永久電流の磁束密度が重なり合って、つまり合わさって正味の磁束密度がゼロになる現象なのです。
 透磁率をμとし、外部磁場の強さを+Hとすると、外部磁場の磁束密度は+μH、永久電流の磁束密度は−μHで表されます。これを用いて計算すると、

(+μH)+(−μH)=0

となり、重なり合った効果で正味の磁束密度がゼロになるのです。永久電流の回りには、外部磁場が強さを持って存在します。存在する外部磁場が間違いなく永久電流に作用しています。すなわち、完全反磁性の領域でも磁場強度(H)は存在します。存在する外部磁場の磁場強度と(+H)と存在する永久電流の磁場強度(−H)が重なって打ち消し合い、正味の磁束密度がゼロになっていますが、磁場強度は存在するので当然、外部磁場は永久電流に作用しているのです。
 永久電流の磁場が外部磁場を排除するという説明は、重なり合って現れる正味の磁束密度の状態だけを、重なり合いの結果だけを、述べたものに過ぎません。
Meissner effect: levitation of a magnet above a superconductor
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Mai-Linh Doan
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